支払督促は簡易な手続きで債務名義を取得する方法です。しかし、簡易な手段である反面、様々な制約やデメリットがあります。債務名義を取得する一方法として支払督促の特長やデメリットを紹介します。
支払督促の特長
債務名義を取得できる
強制執行には債務名義が必要で、債務名義として代表的なものは裁判所の判決です。
しかし、支払督促に仮執行宣言を付けた仮執行宣言付き支払督促も債務名義になります。
そのため、訴訟を提起することなく債務名義を取得することができます。
手続きが簡単
支払督促の申立ては、簡易な申立書を裁判所に提出するだけで申立てをすることができます。
また、訴訟と異なり期日が開かれるわけではないので債務名義を取得するまで裁判所に出頭する必要がありません。
証拠が不要
支払督促の申立ては、民事訴訟と異なり証拠が必要ありません。
支払督促の手続きによれば、証拠がなくとも債務名義を取得することができます。
支払督促の流れ
支払督促の申立て
申立書類と手数料を裁判所に提出することで、支払督促の申立てをします。
その後、裁判所からは相手方に申立書類が送付されます。
【注意】ここで相手方から異議の申し出があれば通常の訴訟に移行します。
仮執行宣言の申立て
支払督促の申立てを行い、相手方から異議の申し出がなければ支払督促に仮執行宣言を付けてもらうべく仮執行宣言の申立てを行います。
これも再度相手方に送付されます。
【注意】ここでも相手方から異議の申し出があれば通常の訴訟に移行します。
強制執行
相手方から異議の申し出がなく、仮執行宣言付き支払督促を取得できた場合には、これをもって強制執行に着手して債権回収を行います。
支払督促のデメリット
異議があった場合は相手方管轄の裁判所
支払督促の申立ては相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に対して行います。
そして、相手方が支払督促に対して異議を申し出て、訴訟に移行する場合には、支払督促の申立てを受けた書記官が所属する簡易裁判所が管轄になります。
そのため、支払督促から訴訟に移行する場合には相手方住所地近くの裁判所が管轄になります。
通常の訴訟の多くは申し立てる側(原告側)の住所地を管轄する裁判所に訴訟提起できることが多いため、相手方住所地近くの裁判所が管轄になるのはデメリットになりえます。
公示送達ができない
通常の訴訟では、相手方住所地が不明の場合には裁判所前の掲示板に訴状を掲示することで送達があったものとする公示送達という制度があります。
しかし、支払督促では公示送達の利用ができません。
そのため、支払督促は相手方住所地が判明している状況でないと利用できないというデメリットがあります。
まとめ
以上のとおり、支払督促にも相応のデメリットがあります。
証拠の整理が難しい場合や小口の金銭債権が断続的に発生する企業などでは活用しがいがありますが、相手方の意義があれば通常の訴訟に移行することから、通常の訴訟を提起することが困難でなければ、通常の訴訟による方が良い場合も少なくありません。
簡易な手続きであるからといって支払督促からはじめてしまうと、相手方からの意義があれば相手方管轄の裁判所に訴訟が係属することになるため、支払督促が適した事案かどうかは十分に検討するべきです。
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