名誉棄損はどのような場合に成立するのでしょうか。また、名誉棄損が認められた場合にはどの程度の慰謝料額が認められるでしょうか。民事上の名誉棄損の扱われ方について解説します。

名誉棄損とは?

名誉棄損は、人の社会的名誉を棄損することです。

名誉棄損があった場合には、刑事上、名誉棄損罪が成立する場合もありますが、ここでは民事上、損害賠償請求がされた場合について紹介します。

なお、民事上、名誉棄損が争われる場合には、原状回復請求として謝罪広告等を求める場合もあります。

名誉棄損が成立する要件について

民事上の名誉棄損が成立するためには、①他人の社会的名誉を低下させるような事実を流布したこと②これにより他人の外部的名誉が低下したことが必要になります。

ただし、重要な部分は「名誉」を「毀損」することで、必ずしも「事実」の流布である必要はなく、単なる「意見」であっても名誉棄損になりえます。

また、名誉棄損といえるためには、「特定人」の名誉を棄損する必要があり、不特定の多数人を対象にしても名誉棄損にはなりません。

既に外部的名誉が低下している人の名誉を棄損する場合にも名誉棄損にはなりません(犯罪を行ったと報道されている人に対して再度犯罪を行ったとの事実を流布する場合など)。

反論のポイント(名誉棄損が民事上違法とならない場合)

名誉棄損を行ったとされる側の反論としては、表現の自由をもとに、

①当該事実の適示が公共の利害に関わること

②当該事実の適示が専ら公益を図る目的でされたこと

③適示された事実が真実であること、又は真実であると信ずるについて相当な理由があること

を主張することになります。

最も争点になりうるのは③の後半です。

「相当な理由」があったといえるためには、取材対象の信頼度や裏付け調査の方法や程度から判断されます。

慰謝料額について

名誉棄損が認められた場合にはどの程度の慰謝料額になるでしょうか。

慰謝料額は、名誉棄損の内容や方法、それにより低下した社会的名誉の程度等により判断されます。

もともと社会的な名誉があった人ほど、名誉棄損により毀損される社会的名誉は大きくなるため、慰謝料額も大きくなりがちな傾向にあります。

どのような内容の名誉棄損であったかにもよりますが、芸能人などのもともとの社会的名誉が重要な人であれば数百万円ほどの慰謝料が認められている事例もあり、一方それ以外の一般私人や企業の代表取締役など、社会的名誉が重要視されない人であれば、数十万円ほどの慰謝料にとどまっている事例が多いといえます。

総じて、それほどの慰謝料額は認められませんが、名誉棄損によりどの程度の社会的名誉の低下があったのかが重要視されています。

おわりに

昨今、インターネット上の名誉棄損が問題になる場面も少なくありません。

しかし、インターネット上の名誉棄損の場合には、損害賠償請求の前に、名誉棄損を行った人を特定するステップがあります。

いずれも容易なものではなく、名誉棄損を争う場合には相当の覚悟が必要になります。

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