介護施設の利用者(94歳、以下「A」)が、施設でおやつとして提供されたゼリーを喉に詰まらせて窒息死した事案について、その相続人から施設に対して約2000万円もの損害賠償請求がされた事案です。
結論
本件の施設では、利用者Aを含む特に見守りが必要な利用者を食堂の一画に集めることで多数の利用者を数名の職員で見守ることができる体制を講じていた
ゼリーの配膳の際に、他の利用者への配膳が終了した後にAへの配膳を行う、そのような配膳を行わない場合にはゼリーをAの手の届かない場所に置き、全員への配膳終了後に職員がAの見守りができる状態になってからAへの配膳を行うなどの一般的な措置を講じていれば、Aが他の利用者への配膳を行っている間にゼリーを誤嚥する事態や、職員がAの誤嚥にしばらく気づかないという事態は避けられた
本件施設には誤嚥防止義務違反があり、約2000万円の慰謝料の支払義務がある。
理由
- 利用者Aが、本件施設の利用開始以前の約1年3か月の間に誤嚥性肺炎で3度にわたり入院し、食事の見守り等の配慮を必要とする状態にあった
- 本件施設の利用開始以降も、自宅での食事の際に誤嚥しそうになってむせ込むことがあったため、Aの子(相続人)らが常時食事の見守りを行っていたこと
- Aの子らは、本件施設の職員に対し、あらかじめ、Aが誤嚥性肺炎を複数回起こしている上、自宅においても食事中にむせ込むことがあることを伝えており、また、Aが本件施設を利用する度に、食事の際の声掛けや見守りは必ず行ってほしいと伝えていたこと
- 以上の事実を認識した本件施設が、Aについて食事の際の声掛けや見守りを行い誤嚥に注意を払う方針を採用していたこと
- 本件事故当時、Aが94歳と高齢であったこと
解説
介護施設が恒例の利用者の誤嚥を防止するためにいかなる措置を講じる義務を負うかについては、利用者の既往歴・嚥下障害の有無や程度、誤嚥の危険性の有無・程度のほか、施設側の介護体制も踏まえて判断されます。
本件では、Aの誤嚥性肺炎による入院歴やそのようなAの状態を把握していた施設側の体制をもとに、Aの見守りが不十分であったとして注意義務違反が認められました。
まとめ
高齢者が利用する施設は、いわば誤嚥等による死亡事後が発生しやすい状況にあり、一度死亡事後が発生すると数千万を超える損害賠償が問題なるため酷なように思えます。
しかし、残された相続人としては、本件のように誤嚥の可能性等を伝えていたのに、十分な対応がされなかったというのであれば、その結果に対する責任を追及するとしてもやむを得ないかもしれません。
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