遺言書は遺産分割をスムーズに行うために重要なものです。ただし、様式に厳しいルールがあり、せっかく作成した遺言書が無効になる等の可能性もあります。このコラムでは基本的な遺言書の文例と注意を解説します。
【1. 遺言書の文例(基本形)】
以下は、法的に有効とされる内容を備えた基本的な遺言の文例です。
◆ 自筆証書遺言の文例
遺言書
私、山田太郎(昭和40年1月1日生)、本籍 東京都○○区○○町、現住所 東京都△△市△△町△丁目△番地は、以下のとおり遺言する。
第1条 私の所有する不動産(東京都○○区○○町○丁目○番○)は、長男 山田一郎(昭和15年1月1日生)に相続させる。
第2条 私の預金口座(○○銀行○○支店 普通預金口座番号1234567)にある預金全額は、長女 山田花子(昭和20年5月1日生)に相続させる。
第3条 遺言の執行者として、弁護士●●を指定する。
令和●年●月●日
東京都△△市△△町△丁目△番地
山田太郎(署名) 印
【2. 遺言書作成の注意点】
◆ 自筆証書遺言の注意点
- 全文、日付、氏名はすべて自筆で書くことが必須です(ワープロ不可)。
- 押印(認印でも可だが実印が望ましい)を忘れずに。
- 誰にどの財産を渡すのかを明確に記載する(特定しにくい書き方は避ける)。
- 日付は「令和〇年〇月〇日」など、特定できる形式で書く。
- 保管方法にも注意。紛失や改ざんのリスクがあるため、法務局の保管制度利用も検討を。
◆ 公正証書遺言の注意点
- 証人2人が必要。ただし、推定相続人・未成年者・受遺者は証人になれません。
- 内容は公証人がチェックしてくれるので形式ミスは起こりにくいですが、事前準備(財産目録など)は必要。
- 公証人との事前打ち合わせを丁寧に行うことで、希望がきちんと反映される。
【3. よくある失敗例】
- 「財産を妻にすべてあげる」とだけ書いたが、法定相続分を侵害していたため無効に近い状態に
- 「長男に家をやる」と書いたが、不動産の所在地や登記情報が不明確で登記できなかった
- 自筆証書遺言で日付が「2025年春ごろ」と書かれており、遺言として無効
【まとめ】
遺言は、しっかりとした形式で正確に書かれていれば、大切な意思を法律上確実に実現できます。
しかし、形式的な不備やあいまいな記載によって無効になるケースも少なくありません。
特に以下のような場合は、遺言書を作成することがおすすめです:
- 財産が多岐にわたる
- 相続人間に不仲がある
- 特定の相続人に多く渡したい
- 内縁関係・再婚など家族関係が複雑
遺言は「書くだけ」ではなく「有効であること」が最も重要です。心配な場合は、弁護士に相談しながら作成すると安心です。
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