労災は、まさに業務中に運んでいた物が崩れてケガをした場合などだけではなく、休憩中にケガをした場合や、仕入れ等のために事業所から外にでていた際にケガをした場合にも認められる可能性があります。このコラムでは労災保険の概観と労災認定のポイントについて紹介します。
適用労働者
労災の対象者は適用事業に従事する労働者です。
ほぼすべての労働者が対象になります。
また、中小事業主、個人タクシー、一人親方などは純粋な労働者にはあたらないものの、任意的な特別加入が認められています。
労災保険の成立・保険料
労災保険の適用事業が開始されたときに保険関係が自動的に成立します。
労災保険料は適用事業の種類ごとに算定され、事業主が収めることになりますが、仮に事業主が保険料の支払いを怠っていた場合にも労災保険に基づく給付は行われます。
労災事故が起こった場合、保険料の追加負担はないのが原則であるものの、事業主に相当の落ち度がある場合には保険給付に要する費用の全部又は一部の支払いを求められます。
保険給付
業務災害等に関する各給付
療養補償給付
業務上の負傷に関し、労災病院等において無料で必要な治療が受けられます。
労災指定病院以外で治療を受ける場合には、労働者が一旦治療費を病院の窓口で支払った後、労災認定を受け、支払った治療費の還付を受けることも可能です。
このとき、健康保険を使い、後に調整することもできます。
休業補償給付・休業特別支給金
業務上の負傷のために労働することができなくなったときには、休業の4日目から、1日につき給付基礎日額(過去3か月の平均賃金)の6割が支給されます。
また、休業特別支給金として休業4日目から休業給付基礎日額の2割が支給されます。
傷害補償給付・傷害特別支給金
業務上の負傷が治癒したが、身体に障害が残った場合には、障害の程度(等級)に応じ給付が受けられます。
障害等級は1級~14級まであり、たとえば「局部に神経症状を残すもの」や「三歯以上に対し歯科補てつを加えたもの」、「上肢の露出面にてのひらの大きさの酷いあとを残すもの」は14級に該当し、障害補償給付として給付基礎日額の56日と、特別支給金として給付基礎日額56日分と8万円が支給されます。
遺族補償給付・遺族特別支給金等
労働者が業務上死亡した場合には、遺族の数に応じ、給付基礎日額の153日分~245日分が支給されます。
また、遺族には葬祭料として、31万5000円に給付期日額の30日分を加えた金額が支給されます。
傷病補償年金・傷病特別支給金
業務上負傷した労働者が療養開始後1年6月を経過しても治癒せず、その負傷の程度が労災規則上の傷病等級に該当するときは、傷病補償年金として給付基礎日額の313日分~245日分が支給されます。
また、傷病等級に応じて、傷病補償年金と同等額の傷病特別年金と傷病特別支給金として100万円程度が支給されます。
労災の認定
業務災害に関する労災給付を受けるためには、労働者に業務上、負傷等が発生したことが必要です。
ここでの業務上の認定は、業務遂行性と業務起因性により判断されます。
業務遂行性
業務遂行性は、労働者の負傷等が事業主の業務を遂行しているときに発生した場合に認められます。
具体的には以下の類型に分かれます。
- 事業主の支配下にあり、かつその管理下にあって業務に従事している際に生じた災害
- 事業主の支配下にあるが、その管理を離れて、業務に従事している際の災害
→休憩中や始業前、終業後に災害が発生した場合です - 事業主の支配下にあり、かつその管理下にあるが。業務には従事していないときに生じた災害
→通常、事業場をでて事業場に戻る場合にはその間を出張とみて、その間の行為は積極的な私的行為を除き、業務遂行性が認められます。
業務起因性
業務起因性が認められるためには、業務と負傷との因果関係があることが必要です。
業務遂行性の各類型のうち
- 類型については、自然現象や他者による加害があった場合に争いになりますが、当該職場に定型的に伴う危険であれば業務起因性が認められることになります。
- 類型については、事業場施設の不備・欠陥によって災害が発生したときに限り業務起因性が認められます。
- 類型については、危険にさらされる範囲が広いため業務起因性が広く認められています。
まとめ
労災の認定には難しい判断が必要な場合が少なくありません。労災が認められるか否かは労働者・使用者を問わず重要な事柄ですので、労働者の負傷等にあたって少しでも業務との関係性が疑われる場合には専門家への相談をおすすめします。
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