相続において、家族間のトラブルを未然に防ぐためにとても効果的なのが「遺言」です。

「まだ先のことだから」と思われがちですが、いざ相続が発生すると、遺産の分け方を巡って家族間の争い(“争族”)が起こることも少なくありません。

本コラムでは、遺言の種類・作り方・遺言を残すことのメリットについて、法律の視点から分かりやすく解説します。

1.遺言書の主な種類

民法ではいくつかの遺言方法が認められていますが、日常的に利用される主な遺言の形式は以下の2つです。

(1)自筆証書遺言

• 特徴:本人が全文、日付、氏名を自筆で書き、押印する。

• 費用:かからない(手軽)

• リスク:形式ミスで無効になる可能性あり。紛失・改ざんの恐れも。

• 補足:法務局に保管を申請できる制度(自筆証書遺言保管制度)を使えば、より安全。

(2)公正証書遺言

• 特徴:公証人に内容を伝え、公証人が作成。証人2名が必要。

• 費用:数万円程度(遺産の額による)

• メリット:形式不備の心配がなく、原本が公証役場に保管されるため安全。

2.遺言の作り方(基本の流れ)

◆自筆証書遺言の場合

1. 全文・日付・氏名を自筆で記載し、押印する

2. 内容に誤りや不明確な表現がないか確認

3. 信頼できる人に保管を依頼するか、法務局の遺言書保管制度を利用

◆公正証書遺言の場合

1. 事前に遺言の内容を検討し、必要な資料を準備

2. 公証人役場に相談し、日時を予約

3. 証人2名を手配し、本人が公証人の面前で意思を伝える

4. 公証人が作成・読み上げた内容を確認して署名・押印

※遺言内容をしっかり確定させるため、弁護士など専門家に相談するのも有効です。

3.遺言を作るメリット

(1)遺産分割をめぐるトラブル防止

「誰に」「何を」「どれだけ」遺すかをはっきりさせることで、相続人間の争いを防ぐことができます。特に不動産や預金などが複数ある場合、分け方が明確でないと揉める原因になります。

(2)相続人以外の人にも財産を遺せる

遺言があれば、法定相続人ではない人(例:内縁の配偶者、世話になった人、団体など)に財産を遺すことも可能です。

(3)認知や寄与分の指定ができる

遺言で非嫡出子の認知をしたり、特定の相続人に「寄与分」(被相続人の財産形成に特に貢献したこと)を認めることもできます。

(4)遺言執行者を指定できる

遺言に基づいて手続きを進める「遺言執行者」を指名しておくと、遺産分割や名義変更がスムーズに行えます。

まとめ

遺言は、自分の意思を明確に残すための大切な手段です。

どの形式を選ぶかは、状況や財産内容によって異なりますが、「作らなかったために家族が揉める」ことを防ぐためにも、早めの準備が何より重要です。

特に、不動産を複数所有している方、再婚家庭、子どもがいない夫婦などは、遺言を残すことで大きなトラブル防止につながります。

「うちはまだ大丈夫」と思わず、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

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