近年、インターネットやSNSの普及により、振り込み詐欺の被害が増えています。被害に遭い、振り込んでしまったお金を取り戻したいという相談も多く寄せられています。
しかし、犯人は振込先の口座からすぐに資金を移動させてしまうため、全額回収は非常に難しいのが実情です。とはいえ、「振り込み詐欺救済法」に基づく手続きを適切に進めることで、一部でも被害金を取り戻せる可能性はあります。
今回は、この手続きの大まかな流れと注意点を解説します。
口座凍結手続きとは?
「振り込み詐欺救済法」とは、詐欺被害に遭った人が犯人の口座にあるお金を回収できるように定められた法律です。
犯人の口座が犯罪に使われた疑いがある場合、金融機関は捜査機関などからの情報提供を受けて、その口座の取引を停止(凍結)します。
凍結は振込先の口座だけでなく、犯人が資金を移動した先の口座にも及びます。複数の金融機関にまたがって資金が動いていても、連携して凍結対応が取られます。
被害者本人が直接金融機関に依頼しても対応が遅くなることが多いため、警察や弁護士などを通じた手続きが迅速です。
公告と預貯金債権の消滅手続き
口座凍結後、対象口座は預金保険機構のホームページで公告されます。
公告には口座名義人や残高、凍結日時などが掲載され、約60日間の公告期間中に口座名義人が権利を主張しなければ、口座にある預貯金債権は消滅します。
この消滅手続きが終わると、凍結口座の残高が被害回復分配金として被害者に配分される段階に移ります。
なお、口座名義人が訴訟を起こすなどした場合、公告や消滅手続きが中断されることもあります。
被害回復分配金の支払い手続き
消滅手続き終了後、被害者に対して分配金の支払い手続きが始まります。
支払いの申請期間は30日以上設けられ、被害者は本人確認書類などを準備して申請しなければなりません。
被害金の全額が戻ることは稀で、預貯金残高が不足している場合は、被害者間で按分(分配)されることが一般的です。
被害金回収までにかかる期間
口座凍結から被害回復金の支払いまでは、少なくとも約90日以上かかります。
- 口座凍結から公告まで:約30~60日
- 公告期間と消滅手続期間:約60日以上
- 支払い申請期間:約30日以上(実際は60日程度かかることも)
このため、手続きを始めてすぐにお金が戻るわけではありませんが、被害回復のために根気強く対応する必要があります。
まとめ
振り込み詐欺の被害に遭った場合、全額回収は難しいものの、「振り込み詐欺救済法」による口座凍結手続きなどを通じて一部でも回収できる可能性があります。
まずは警察や専門家に相談し、速やかに口座凍結の手続きを進めることが重要です。
被害金の回収は時間がかかるため、手続きの進行状況をこまめに確認し、必要な申請を漏れなく行うようにしましょう。
【監修】

- 代表弁護士
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