「うちはみなし労働だから残業代は出ません」
このように会社から説明された経験がある方もいるかもしれません。
しかし、「みなし労働時間制」が導入されているからといって、無制限に働かされ、残業代が一切出ないというのは誤解です。
今回は、みなし労働時間制の基本や、未払い残業代が発生するケース、実際の請求方法について、法律の観点からわかりやすく解説します。
そもそも「みなし労働時間制」とは?
「みなし労働時間制」とは、実際に何時間働いたかに関係なく、あらかじめ決めた時間だけ働いたとみなす制度です。
これは、労働時間の把握が困難な業務(たとえば、営業職などの外回りや、専門的な裁量の大きい仕事)に対して使われる仕組みです。
みなし労働時間制には、主に次の3種類があります:
- 事業場外みなし労働時間制(外回り営業など)
- 専門業務型裁量労働制(研究開発、プログラマーなどの専門職)
- 企画業務型裁量労働制(経営企画やマーケティング部門など)
ただし、これらの制度はあくまで「労働時間の算定が困難」な業務に限られ、要件を満たしていなければ無効です。
「みなし」でも残業代が発生するケースとは?
「みなし制=残業代ゼロ」と思われがちですが、一定の条件を超えた労働には、当然ながら残業代が発生します。
たとえば…
- 所定労働時間を超える労働が「通常必要とされる」場合
- 法定時間外(1日8時間・週40時間超)の労働
- 深夜労働(22時〜翌5時)
- 休日出勤
これらの時間外労働が発生している場合には、割増賃金(残業代)を請求する権利があります。
「固定残業代」との違いにも注意
よく混同されるのが「固定残業代制度」です。
これは、月給にあらかじめ20時間分、30時間分といった残業代を含める制度ですが、実際の残業がそれを超えた場合には、超過分の残業代を別途支払う義務があります。
制度の導入自体は合法でも、運用を誤れば違法となり、未払い残業代の請求対象となることがあります。
未払い残業代を請求するには?
「自分にも未払い残業代があるのでは?」と感じたら、以下の流れで対応します。
1. 勤務実態の証拠を集める
まずは、自分が何時間働いていたかを客観的に証明できる証拠を集めましょう。
- タイムカードや勤怠記録
- 業務日報やメール送受信履歴
- PCログイン履歴やシフト表
- スマホのGPS記録など
証拠がなければ会社は支払いに応じず、裁判でも主張が認められにくくなります。
2. 未払い残業代を計算する
残業代は、以下のような計算式で求められます。
コピーする編集する残業代 = 1時間あたりの賃金 × 残業時間 × 割増率(1.25〜1.5倍)
ただし、「みなし時間」や「固定残業代」を控除したり、深夜や休日労働の割増率を計算したりと、非常に複雑です。
弁護士に相談すれば正確な金額を算出してもらえます。
3. 会社と交渉 or 法的手続きへ
証拠と計算結果をもとに会社に請求し、それでも支払われない場合は、労働審判や訴訟を検討することになります。
弁護士に依頼すれば、内容証明郵便の作成から会社との交渉、訴訟対応まで一任できます。
弁護士に相談するメリット
- 正確な残業代の計算をしてもらえる
- 会社との交渉を代理してもらえる(ストレス軽減)
- 訴訟や審判の手続きも任せられる
- 泣き寝入りを防げる
弁護士への相談は、時効(原則3年)が来る前に早めに行うのが重要です。
まとめ
「みなし労働時間制」と聞くと、残業代が出ない制度と誤解されがちですが、正しく運用されていなければ未払い残業代が発生している可能性が十分あります。
残業代を請求できるかどうか、自分一人で判断するのは難しいため、まずは証拠を集めて専門家に相談することが第一歩です。
【監修】

- 代表弁護士
- 年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
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