従業員が労働基準監督署に通報すると、企業は臨検(立ち入り調査)や書類提出を求められ、違反が確認されれば是正勧告を受けることになります。対応を誤れば刑事罰に発展するケースもあり、企業にとっては大きなリスクです。本記事では、通報から調査・是正勧告までの流れと、企業が取るべき対応や未然に防ぐための体制づくりのポイントを解説します。
労基署に通報されやすいケース
労働者は、事業場に法令違反があると労基署に通報(申告)できます。代表的なケースは以下のとおりです。
- 長時間労働や残業代の未払い
- 年次有給休暇を取得させない
- 休憩時間を与えない
- 就業規則を作成していない(労働者10名以上の事業場)
- 不衛生な労働環境
これらに心当たりがあれば、通報前に自主的に是正することが重要です。
労基署に通報された後の流れ
通報を受けた労基署は、次のような手順で調査を進めます。
(1) 立ち入り調査(臨検)
予告あり・なしにかかわらず、労基署が事業場を訪問します。労働条件や安全衛生に関する実態を確認します。
(2) 帳簿や書類の確認
労働者名簿、賃金台帳、就業規則、勤怠記録、36協定など、関連書類の提出が求められます。虚偽の説明や拒否は法律違反です。
(3) 指導票・是正勧告
- 指導票:改善が望ましい点を指摘するもの
- 是正勧告:明確な法令違反がある場合に出されるもの
是正勧告を受けた場合は、指定された期限までに改善し、報告しなければなりません。
(4) 刑事手続き
悪質な違反や重大事故がある場合には、検察官に送致され、刑事罰が科されることもあります。
立ち入り調査を受ける際の注意点
- 必要な資料をあらかじめ整理しておく
- 実態を誠実に説明する(虚偽は厳禁)
- 是正勧告を受けたら速やかに従う
- 弁護士に相談して対応方針を確認する
通報されないための社内体制づくり
労基署からの是正勧告に追われる前に、日常的なコンプライアンス体制を整備することが大切です。
- 労働時間・休暇管理を徹底する
- 賃金計算を適正に行う
- 安全衛生管理体制を整える
- 社員の声を吸い上げる相談窓口を設ける
顧問弁護士と連携すれば、労務管理の適法性を確認し、通報リスクを最小限に抑えることができます。
まとめ
労基署に通報されると、臨検・是正勧告・報告義務といった一連の手続きが発生します。是正勧告を軽視すると刑事罰に発展するおそれもあるため、誠実かつ迅速な対応が必要です。
また、そもそも通報されないように、普段から労務管理を徹底し、必要に応じて弁護士のサポートを受けることが、企業の信頼を守るうえで最も有効です。
【監修】

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