近年、資産運用への関心が高まる中、不動産投資に目を向ける人も増加しています。しかし、その一方で、「家賃収入が得られる」「節税になる」といったメリットだけを強調する形での強引な営業や、投資用マンションに関する詐欺的なトラブルも後を絶ちません。
今回は、高校教師がマンション投資に勧誘された結果、多額のローンを抱えることになった事案について、第1審・第2審の裁判例をもとに解説します。
事案の概要
高校教師である原告は、宅建業者の従業員から突然の電話勧誘を受け、自己資金わずか150万円で2室の投資用マンションを購入しました。購入にあたっては、「家賃収入が安定して得られる」「節税につながる」といった利点ばかりが説明され、空室や家賃滞納などのリスクについての具体的な説明はされていなかったといいます。
第1審(東京地裁平成31年4月17日判決):リスク説明義務の認定
東京地裁は、「不利益事実の不告知」や「詐欺的な勧誘」とまでは認定しなかったものの、次のような理由から事業者の説明義務違反を認めました。
- 原告は不動産投資の経験がなく、資金力も乏しい。
- にもかかわらず、1室あたり2,000万円を超える投資用マンションの購入を勧誘した。
- そうであれば、少なくとも空室リスク・家賃滞納リスク・価格下落リスク・金利上昇リスクなどについて、丁寧で分かりやすい説明を行うべきだった。
このように、投資家の属性(経験・資金力)に応じた丁寧なリスク説明が求められると判断されました。
第2審(東京高裁令和元年9月26日判決):形式的書面では説明義務は尽くせない
控訴審では、業者側が「重要事項説明書」だけでなく、リスクを記載した「告知書兼確認書」を提示し、原告が署名・押印していることから、「説明義務は果たしている」と主張しました。
しかし東京高裁はこの主張を退け、以下のように判断しました。
- 被告従業員は、証人尋問において「告知書兼確認書」の内容を説明したという証言をしておらず、その説明がなされたと認める証拠もない。
- たとえ契約締結時に書面で抽象的にリスクを説明していても、その前段階の勧誘時に、あたかもリスクが存在しないかのような計算例や資料を使った説明を行っていた。
- こうした経緯を踏まえると、「告知書兼確認書」は形式を整えるためだけのものであり、リスク説明としては不十分である。
結果として、控訴審でも説明義務違反が認定され、業者側の主張は退けられました。
まとめ
この裁判例は、不動産投資の勧誘において、事業者が形式的な書面を用意し署名を得ていても、それだけでは説明義務を尽くしたとは評価されないことを示しています。
特に、投資経験のない消費者に対しては、リスクに関する実質的・具体的な説明が求められ、勧誘の全体的な経緯が厳しく審査されます。
本件は、事業者側にとっては厳しい判断とも言えますが、多額のローンを伴うマンション投資の勧誘に際し、消費者保護の観点からここまでの注意義務が課されるのは妥当ともいえるでしょう。
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