交通事故によって大切な人が亡くなったり、重い後遺障害が残ってしまったりした場合、その被害は単なる治療費にとどまりません。事故がなければ将来得られていたはずの収入も「損害」と評価され、加害者側に賠償請求ができる場合があります。これを「逸失利益」と呼びます。
ただし、この逸失利益は、単純に「年収 × 年数」で求めるわけではありません。実務上は「ライプニッツ係数」と呼ばれる数値を使って調整します。本コラムでは、この“聞き慣れない係数”の意味とその背景を、できるだけ分かりやすく解説します。
逸失利益とは何か?──将来の収入をどう評価するか
逸失利益とは、「事故さえなければ、将来得られていたであろう収入の減少分」のことです。
たとえば、40歳の働き盛りの方が交通事故で亡くなった場合、あと25年は働いて年収600万円を得られていたかもしれません。これだけを見ると「600万円 × 25年=1億5000万円」が逸失利益のように思えますが、実はそう単純ではありません。
なぜ「ライプニッツ係数」が必要なのか?
将来分の収入を前倒しでもらうことになる以上、「その分を運用すれば利益が出る」という前提があります。つまり、本来なら毎年1年ずつ受け取っていたはずの収入を、まとめて一括で受け取ることで得られる“利息相当分”は、あらかじめ差し引く必要があるという考え方です。
この“利息相当分の控除”を計算するための数値が、ライプニッツ係数です。
ライプニッツ係数の仕組みと計算例
たとえば、年収500万円、労働能力喪失率100%、喪失期間10年の後遺障害が残ったとします。単純計算では「500万円 × 10年=5000万円」ですが、この額を今すぐ一括で受け取れば、利息分の得をしてしまいます。
民法上、年3%の運用が想定されているため、これを調整すると、10年分のライプニッツ係数は「8.5302」。つまり、
500万円 × 8.5302 = 約4265万円
これが、適正な「逸失利益」とされます。
弁護士に相談すべき理由
逸失利益の計算には、基礎収入の設定、後遺障害等級による喪失率、就労可能年数の判断など、専門的な知見が欠かせません。特に、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準のどれで進めるかによって、金額が大きく変わる可能性があります。
「少しでも多くの適正な賠償を受け取りたい」とお考えの方は、早期に交通事故に詳しい弁護士へ相談されることをおすすめします。
まとめ
- 逸失利益とは、将来得られていたはずの収入のこと
- その金額を適正に計算するには「ライプニッツ係数」が必要
- 中間利息控除により、一括受領による“得”を調整する仕組み
- 法改正で係数が変わり、賠償金額が増えるケースもある
- 計算や交渉は専門的なので、弁護士の関与が望ましい
必要であれば、交通事故専門の弁護士による個別相談も承っています。逸失利益の正確な算定にご不安がある方は、お気軽にご相談ください。
【監修】

- 代表弁護士
- 年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
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