令和5年4月1日、所有者不明不動産の問題を解消するため、共有制度の見直し相続制度の新たな仕組みがスタートしました。本記事では、今回の主な改正点について分かりやすくご紹介します。

【1】共有制度の見直し

① 管理・変更行為のルール緩和

これまで、共有物に関する「管理行為」には持分価格の過半数の同意が必要で、「変更行為」には共有者全員の同意が求められていました。

例えば:

  • 管理行為:共有物の賃貸契約など
  • 変更行為:共有地の舗装や建物の修繕など

しかし、軽微な変更にも全員の同意が必要だったため、共有物の活用が進まないという問題がありました。

今回の改正により、軽微な変更行為については「管理行為」として扱われ、持分価格の過半数の同意で実施できるようになりました。


② 共有物分割の柔軟化

従来は、共有物の分割には「現物分割」か「競売による分割」の方法しか法律上明記されておらず、相続による共有と通常の共有が重なる場合には、別途「遺産分割」も必要でした。

改正後は、判例で認められていた「賠償分割(現物取得者が他共有者に金銭を支払う)」が明文化され、また、相続開始から10年を経過した場合は、遺産分割を経ずに共有物分割訴訟で処理できるようになりました。


③ 共有者が不明な場合の対応

これまで、共有者の一部が行方不明だった場合には「不在者財産管理人」の選任申立てなど、手間とコストがかかる手続きが必要でした。

新制度では、裁判所の決定により、

  • 不明共有者以外の共有者全員で変更行為
  • 持分価格の過半数で管理行為

を進めることが可能になり、手続きが大幅に簡略化されました。

【2】相続制度の新設・見直し

① 遺産分割に関する新ルール

長期間遺産分割が行われないまま放置された結果、相続人が増えすぎて所有者不明不動産となるケースが多くあります。

これを防ぐため、改正法では、相続開始から10年が経過した後に行う遺産分割については、「特別受益」や「寄与分」の主張ができなくなることになりました。
これにより、分割の簡素化と紛争の予防が図られます。

※このルールは、改正前に発生した相続にも適用されますが、実際の適用は「相続開始から10年」または「令和5年4月1日から5年経過(=令和10年4月1日)」のどちらか遅い方からとなります。


② 相続人不明の場合の手続き短縮

従来、相続人が不明な相続財産の処分には、「相続財産管理人」を選任し、1年以上かけて手続きを進める必要がありました。

新たに導入された「相続財産清算人制度」により、期間が約半分に短縮され、所有者不明不動産の迅速な処理が可能となります。

【まとめ】

今回の法改正では、所有者不明不動産の解消を目的として、

  • 共有物の管理や変更手続きの柔軟化
  • 遺産分割や相続手続きの合理化
    など、実務上重要なルールが多数見直されました。

共有者の一人が不明で進まなかった土地の活用や、相続放置による不動産の名義整理でお困りの方は、早めに専門家へご相談いただくことが重要です。

【監修】

米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
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