離婚において避けて通れないのが財産分与。しかし「どう分けるか」だけでなく、「どのような税金がかかるのか」も見落とせない重要な視点です。多くの人は税金を意識せず話を進めてしまい、結果的に予想外の負担を招くことも。今回は、税負担を避けるための基本ルールや注意点をわかりやすく整理しました。

財産分与は基本的に非課税だけど…

財産分与は元配偶者が築いた財産を分け合う制度であり、贈与として扱われるわけではないため、原則として贈与税の対象にはなりません。つまり、税金面では安心して手続きを進められるケースが多いのです。

それでも税金がかかる可能性がある典型ケースとは?

  • 税逃れを目的とした離婚
     例えば、贈与税を回避するためだけに形式的に離婚し、財産を移転するようなケースでは、税務上「贈与」とみなされる可能性があります。税務上の正当性を保つためにも、離婚には本質的・実質的な意思が必要です。
  • 内容が不自然に高額な分与
     たとえ離婚に伴うものでも、一般的な分与額から大きく乖離していれば、超過分に対して贈与税が課されるリスクがあります。客観的な評価や合理的な説明を準備しておきましょう。
  • 不動産の移転
     自宅など不動産を財産分与で受け取る場合には、所有権移転の登記が必要となり、登録免許税が発生します。評価額の2%程度が目安ですので、不動産を分与する際のコストとして計画に加えることが重要です。
  • 含み益のある財産の分与(売却相当とみなされる場合)
     購入時より価格が上がっている資産を分けた場合、それを譲渡とみなし譲渡所得税や住民税がかかるケースがあります。取得費や譲渡費用といった控除に加え、特別控除がある場合は活用を検討しておきましょう。

注意したい税制の優遇制度と適用条件

  • マイホーム特別控除
     自宅を譲渡扱いとみなされた場合に発生する譲渡所得への課税を回避するため、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。ただし、配偶者間での譲渡では、離婚成立後に行うことで適用対象となる点が重要です。つまり、離婚前に譲渡扱いにされてしまうと、この優遇措置を使うことができません。
  • 慰謝料扱いと財産分与の違い
     例えば不貞行為などに関連して「慰謝料」として不動産を受け取った場合は、財産分与とは別途で不動産取得税がかかってしまうことがあります。財産の取得を合理的かつ明確に財産分与の枠内で扱うことが、税負担を軽減する上で重要です。

弁護士に相談すべき理由

  • 分与の構成や割合の判断をサポート
     専門家である弁護士は、夫婦の貢献度や事情を踏まえて、公正かつ税制上も無理のない分与内容を提案できます。
  • 評価や交渉の代理
     特に不動産や非上場株式など、評価が難しい資産の分け方について、的確な査定の助言や交渉を支援します。
  • 税理士との連携
     税制に対する理解が必要な場面では、税理士との協働体制がある事務所であれば、より安心して対応できます。

まとめ

離婚に伴う財産分与は、税金がかからないのが原則ですが、条件次第では思わぬ税負担が発生する可能性もあります。不動産の譲渡時期や分与額のバランス、分与形式の選択など、判断が必要な場面が多くあります。ご自身の状況に応じた対応を誤らないためにも、弁護士や税理士による早期の相談を強くおすすめします。

【監修】

米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
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