令和6年の民法改正により、「法定養育費」という新しい制度が導入される予定です。この制度は、これまで養育費を取り決めていなかった元配偶者にも、法律上一定額の養育費を請求できるようにするものです。令和8年5月までに施行される見込みで、ひとり親家庭の大きな支えとなる制度になることが期待されています。

本コラムでは、法定養育費制度の内容やメリット、注意点などを分かりやすく解説します。


法定養育費とは?

法定養育費とは、離婚時に養育費について何の取り決めもしていなかった場合でも、法律で定められた最低限の金額を、元配偶者に請求できるようにする制度です。

たとえば、離婚後に子どもを一人で育てることになったものの、相手から養育費をもらえず困っていた場合でも、法定養育費があれば、取り決めなしでも支払いを求めることができます。

この制度の導入は、これまで泣き寝入りせざるを得なかった多くのひとり親世帯にとって、大きな救済手段となるでしょう。


いつから始まる?

改正民法は令和6年5月に公布され、そこから2年以内に施行される予定です。つまり、令和8年5月までにはこの制度が実際にスタートする見込みです。

現在(令和7年時点)では、具体的な養育費の金額や計算方法は公表されていませんが、今後法務省によって基準が示されることになります。


請求できる期間と終わる時期

法定養育費は、離婚時にさかのぼって請求できるとされています。たとえば、離婚から2年後に請求をした場合でも、その2年分の養育費をまとめて請求できる可能性があります。

ただし、以下のいずれかの時点で、法定養育費の支払義務は終了します。

  • 父母の間で正式に養育費を取り決めたとき
  • 家庭裁判所で養育費が決定されたとき
  • 子どもが18歳に達したとき

大学進学などによる延長は、この制度の対象外です。できる限り早い段階で、父母の間で養育費の話し合いをしておくことが望ましいでしょう。


支払いを拒否されることはある?

法定養育費といっても、必ずしも全員が請求できるわけではありません。たとえば、支払う側の元配偶者が「支払能力がない」「支払いによって生活が困窮する」といった事情がある場合には、支払いが免除されることがあります。


■ 強制的に回収できる「一般先取特権」とは?

法定養育費に関しては、改正民法により「一般先取特権」という制度も付けられます。これは、養育費を他の債権よりも優先的に回収できる権利で、調停や判決などがなくても、裁判所に申立てるだけで強制執行が可能になる仕組みです。

つまり、相手が支払いを拒否していても、相手の給与や預金を差し押さえて養育費を回収できるという強力な手段が用意されるということです。


■ 制度導入前に離婚する場合の注意点

法定養育費は将来に向けた救済制度ではありますが、「最低限の金額」に過ぎません。離婚時には、できるだけ家庭の実情に即した養育費の取り決めをしておくことが、子どもにとっても最善です。

今後離婚を考えている方にとっては、法改正が目前に迫る今だからこそ、弁護士への相談が重要になります。法改正の内容を踏まえた上で、どのタイミングで離婚するのがよいのか、どんな取り決めをしておくべきか、的確なアドバイスを受けることができるでしょう。

まとめ

「法定養育費」は、離婚後も子どもの生活を守るための新しい制度です。離婚時に取り決めをしていなかった場合でも、最低限の支援を求めることができる点で、非常に意義のある改正といえるでしょう。

ただし、法定養育費はあくまでも暫定的・最低限の制度です。現実的には、離婚時にきちんと養育費の取り決めをしておくことが最も重要です。

法改正を控えた今こそ、専門家と相談のうえ、適切な手続きを検討しておくことをおすすめします。

【監修】

米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
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