最近では、働き方の柔軟性が求められる中で、「振替休日」の制度を導入・活用する企業が増えています。振替休日は、企業の労務管理やコストコントロールに有効ですが、適切な運用を怠ると法令違反となるおそれもあります。
本記事では、「振替休日」と「代休」の違い、制度の正しい設定方法、企業が注意すべき点について整理します。
振替休日とは?
振替休日とは、本来の休日に労働させる代わりに、事前に別の日を休日として指定する制度です。
たとえば、会社の所定休日が日曜日である場合に、業務の都合でその日に出勤が必要となったとき、あらかじめ別の平日を休日として指定すれば、日曜日の出勤は法定休日労働とは扱われず、休日手当(通常賃金の1.35倍)を支払う必要がありません。
企業にとっては、コスト管理上も大きなメリットがある制度です。
振替休日と代休の違い
よく似た制度として「代休」がありますが、法律上の取り扱いは明確に異なります。
項目 | 振替休日 | 代休 |
---|---|---|
指定のタイミング | 事前に振替日を決定する必要あり | 事後に代休を与えることが可能 |
法定休日の扱い | 変更後の休日が法定休日となる | 法定休日のまま出勤が発生する |
休日手当の要否 | 不要(通常賃金) | 必要(休日手当の支払いあり) |
企業が休日手当の支払いを避けたい場合には、代休ではなく、振替休日としてあらかじめ日を指定する必要があります。
振替休日を設定する際のポイント
振替休日を有効に適用するためには、以下の3点を守る必要があります。
(1) 事前の通知と合意
振替休日を設定するには、出勤させる前に振替日を通知し、本人の合意を得る必要があります。
就業規則や雇用契約書に振替休日の取り扱いを定めておくとトラブル防止に有効です。
(2) 振替日の確定
「後日振替予定」といった曖昧な取り扱いでは無効になる可能性があります。具体的な日付を明確に指定し、勤務表やシフトにも反映させることが大切です。
(3) 法定休日の確保
労働基準法では、「毎週少なくとも1回の休日(法定休日)」を与える義務があります。振替休日を設定する場合でも、週に1日の法定休日が確保されているかを必ず確認しましょう。
振替休日運用時の注意点
振替休日を制度として導入するだけでなく、以下の点に注意して運用することが重要です。
(1) 労働時間の適切な管理
振替休日が適切に実施されず、実質的に休日が与えられていない場合、未払い残業代や労働時間管理義務違反を問われるリスクがあります。
特に労働時間管理に不備があると、訴訟につながる可能性もあります。
(2) 振替頻度のバランス
業務の都合で頻繁に振替休日を設定すると、従業員の休息が確保されず、健康リスクや労働意欲の低下を招くおそれがあります。制度の乱用は避け、必要最小限の活用にとどめましょう。
(3) 未消化の振替休日の扱い
やむを得ない事情で振替休日が取れなかった場合、その日を代休とみなすのか、賃金で補償するのかといった取り扱いを事前に定めておくことが大切です。
企業の都合で振替休日を取得させられなかった場合には、賃金補償義務が生じる可能性もあります。
まとめ
振替休日は、業務運営の柔軟性やコスト削減に役立つ制度ですが、法令遵守と適正な運用が前提となります。
企業としては、
- 振替休日と代休の違いを正しく理解する
- 事前に合意と日付の明示を徹底する
- 法定休日の確保と労働時間管理を怠らない
といった対応を行うことで、トラブルを未然に防ぎ、働きやすい職場環境を整えることができます。
振替休日を適切に活用し、従業員の健康や法令遵守にも配慮した労務管理を目指しましょう。
【監修】

- 代表弁護士
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