― 東京高裁が「解除無効」と判断した事例 ―
別荘地を購入すると、多くの場合、管理会社との間で「管理契約」を結ぶことになります。
では、この管理契約は、所有者が一方的に「もう管理はいらない」と言えば、自由に解除できるのでしょうか。
この点について、別荘地の管理契約の解除を否定した東京高裁判決(東京高裁令和7年7月1日判決)があります。本稿では、この判決のポイントを分かりやすく解説します。
事案の概要
本件は、別荘地の管理会社Xと、分譲地の所有者Yらとの間の争いです。
- X:別荘地の管理運営を行う会社
- Yら:別荘地の所有者(相続人を含む)
Yらは、別荘地の分譲時に、管理会社(Xの前身)との間で
分譲地の管理・運営を目的とする管理契約を締結していました。
ところが、Yらは平成25年から27年にかけて、
「もう管理契約は解除する」
という意思表示を行います。
これに対しXは、
「解除は無効。管理契約は続いているのだから、共益費を支払うべきだ」
として訴訟を提起しました。
争われた主なポイント
裁判では、特に次の点が問題となりました。
- 管理契約は「準委任契約」なのか
- 管理契約は管理会社の利益のためにも締結された契約といえるか
- 所有者側に「やむを得ない事由」による解除が認められるか
- 所有者が解除権を放棄したといえる事情があるか
- 継続的契約として、解除が制限される事情があるか
1審と控訴審で結論が分かれた
1審(静岡地裁沼津支部)
1審は、概ね次のように判断しました。
- 管理契約は準委任契約的な性質を持つ
- 管理会社の利益のための契約とはいえない
- 所有者は民法651条により原則自由に解除できる
- 解除にはやむを得ない事由もある
その結果、管理契約の解除は有効と判断しました。
控訴審(東京高裁)
これに対し、東京高裁は結論を覆します。
最大のポイントは、
この管理契約は、所有者のためだけでなく、管理会社の利益のためにも締結された契約である
と判断した点です。
その上で、
- 所有者側に「やむを得ない事由」は認められない
- 解除権を放棄していないといえる事情もない
- 別荘地全体の管理を維持する高度の必要性がある
として、
所有者による解除は無効と判断しました。
つまり、
管理契約は今も有効であり、共益費の支払義務は残る
という結論です。
判決の意義と実務への影響
民法651条は、委任契約について「原則自由解除」を認めています。
しかし、これまでの判例は次のような整理をしてきました。
- 受任者や第三者の利益をも目的とする場合
→ 解除は制限される - ただし、
- 受任者に著しい不誠実行為がある
- 解除権を放棄していないと評価できる特段の事情がある
→ この場合は解除可能
本判決は、過去の東京高裁判決(平成28年1月19日)と同様に、
別荘地管理契約は、管理会社の利益を前提にした継続的契約であり、安易な解除は許されない
という立場を明確にしました。
まとめ
- 別荘地の管理契約は、単なる「お世話契約」ではない
- 管理会社の利益を含めた共同的・継続的契約と評価される場合がある
- その場合、所有者であっても自由に解除できるとは限らない
別荘地の管理費トラブルは今後も増えることが予想されます。
「解除できると思っていたらできなかった」という事態を避けるためにも、
管理契約の内容と判例の動向を踏まえた慎重な判断が重要といえるでしょう。
【監修】
- 代表弁護士
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