不動産の賃貸契約において、「借地権」といえば長期契約で借地人の権利が強く保護される制度が基本です。しかし、短期間だけ土地を使用したい場合や、柔軟な契約内容が求められるケースでは、通常の借地権では対応が難しい場面もあります。
そんなときに有効なのが「一時使用目的の借地権(以下、一時使用借地権)」です。本コラムでは、一時使用借地権の基本的な考え方から、実務上の注意点まで分かりやすく解説します。
一時使用借地権とは?
一時使用借地権とは、仮設建物やイベント用地など、明確に期間を限定した目的のために土地を借りる制度です。たとえば、建設現場の仮設事務所や臨時駐車場として土地を利用する場合などが典型です。
この契約は、借地借家法の適用が除外されるため、通常の借地契約とは異なり、更新の制限や建物買取請求などの借地人保護規定が適用されません。
法的根拠とその特徴
借地借家法第25条は、「一時使用のために土地の賃貸借をする場合」には同法の適用を除外する旨を定めています。これにより、以下のような規定が適用されず、契約の自由度が高まります。
- 契約期間の最低年数(通常は30年以上)
- 契約更新のルール
- 建物買取請求権 など
一時使用借地権は、あくまでも「短期・一時的な利用」を前提とした特例であり、形だけ短期契約に見せかけて長期利用を図るような契約は、無効とされるリスクがあります。
地主・借地人双方にとってのメリット・デメリット
地主側のメリット
- 短期契約が可能:次の利用計画がある土地でも柔軟に貸すことができる。
- 契約終了時の明け渡しがスムーズ:更新制度がないため、正当事由がなくても契約終了により土地を回収できる。
地主側のデメリット
- 収益が安定しない:契約期間が短く、継続的な賃料収入が見込みづらい。
- 低額地代となる傾向:借地人保護がないことを前提に、地代を低く設定することが多い。
借地人側のメリット
- 必要な期間だけ借りられる:無駄な契約期間を省き、コストを抑えた運用が可能。
- 比較的安価な賃料:短期契約かつ借地借家法の保護外という性質から、割安な条件で契約できるケースも。
借地人側のデメリット
- 法的保護が乏しい:立退き要求を拒否できず、契約の延長や更新も困難。
- 事業継続にリスク:短期使用が前提のため、長期的な運用を考えている場合には不向き。
契約時の注意点
一時使用借地権として有効に成立させるためには、契約書の記載内容が非常に重要です。実務上、以下の点に注意が必要です。
1. 一時使用の目的を明記
契約書には「一時使用のための借地契約であること」を明確に記載しましょう。たとえば、「○○建設の仮設現場事務所として使用する」など、利用目的や建物の構造・用途を具体的に記載する必要があります。
2. 契約期間を短く設定
一時使用借地権は「短期」が前提です。一般的には数か月~数年以内、長くとも5年程度が目安とされています。
3. 自動更新条項の排除
契約の自動更新は、一時使用の趣旨に反します。「期間満了で終了する」旨を明記し、更新は協議によるものとしましょう。
トラブル回避のためには弁護士の活用を
一時使用借地権は、借地借家法の保護がない反面、トラブルの芽が潜んでいます。「本当に一時使用といえるのか?」「将来、借地人が立ち退きを拒否したら?」といった問題を避けるには、契約書の作成段階から専門家の助言が不可欠です。
弁護士に相談すれば、契約の有効性を担保するとともに、紛争時のリスク回避にもつながります。
まとめ
一時使用借地権は、短期利用のニーズに応じた柔軟な土地活用ができる手段です。ただし、法的保護が制限される性質上、契約内容や運用方法についての誤解やトラブルも起こりやすいといえます。
土地を一時的に貸したい方、短期的に借りたい方、どちらにとっても正確な契約と法的な理解が重要です。
【監修】

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