企業に勤める中で「契約社員の雇止め」はよく議論になるテーマです。
特に、勤務態度や業務上のミスを理由とする雇止めが、労働契約法上有効かどうかは、従業員にとっても会社にとっても重要な問題です。
今回は、クープ事件(東京地裁令和7年3月28日判決)をもとに、勤務態度不良等を理由とする雇止めの有効性について解説します。
1.事件の概要
本件では、クープ社の元従業員が、会社による雇止め(以下「本件雇止め」)を不服として提訴しました。
元従業員は、次の請求を行っています。
- 雇止めは無効であり、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認
- 雇止め後の未払賃金や慰謝料(100万円)の支払請求
これに対して、会社は勤務態度不良や継続的な業務上のミスを理由に契約更新を行わなかったことを主張しました。
裁判所は、元従業員の請求を棄却し、本件雇止めを有効と認定しました。
2.争点:雇止めの合理性と社会通念上の相当性
労働契約法19条では、契約社員の雇止めについて次の2点が判断基準になります。
- 契約更新の合理的期待があるか(19条2号)
- 客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でないか(19条柱書)
裁判所は、これらの観点から本件雇止めの有効性を検討しました。
3.裁判所の判断ポイント
(1)契約更新の合理的期待について
- 元従業員は字幕制作グループで、会社の主要業務に従事
- 契約期間は通算4年10か月、更新回数は5回
- 契約書には「更新する場合があり得る」と記載
- 更新期間・回数に上限は設定されていなかった
これらを踏まえると、元従業員が契約更新を期待する合理的理由は認められるとされました。
ただし、会社は勤務態度やミスの頻度を問題視し、令和4年4月以降は契約期間を1年から6か月に短縮。
この経過により、契約更新に対する合理的期待は相対的に低下すると評価されました。
(2)雇止めの客観的合理性と社会通念上の相当性
- 元従業員は令和3年度まで継続的に注意・指導を受けていた
- 誤字脱字などのミスが改善されず、上長に対する勤務態度も不良
- 契約期間短縮後も、新入社員に対して上長を侮辱する発言を行った
これらの事情から、裁判所は会社の判断に合理性があり、社会通念上も相当であると認定しました。
(3)雇止めによる不法行為の有無
雇止めが有効と認められたため、元従業員に対する慰謝料請求等は成立せず、不法行為には当たらないとされました。
4.結論
- 雇止め無効地位確認請求:棄却
- 慰謝料等請求:棄却
- 勤務態度不良等を理由とする雇止めは、労働契約法上有効と判断
5.実務上のポイント
- 契約社員であっても、勤務態度や業務上のミスが継続する場合、雇止めは有効となる可能性が高い
- 契約更新の合理的期待は、契約期間・更新回数・契約書の文言から判断される
- 企業側は、雇止めの合理性を示すため、注意・指導の記録を残すことが重要
【監修】
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