ある不動産売買契約が問題となりました。売主であるX(自宅所有者)の建物は、債権者の申立てにより競売手続が開始されていました。これを受け、Xの夫であり宅建業者であるAとBが購入希望者Yと交渉し、建物の売買契約を締結します。

しかし、Xは「契約自体は追認するが、手付金500万円の支払いは無権代理なので追認しない」として、Yに対し未払い分500万円の支払いを求める訴訟を提起しました。

(東京地裁令和4年3月2日判決)


争点

本件の中心となった争点は次の2点です:

  1. 売買契約が有効に成立しているか
  2. Yが支払った500万円が有効な弁済(売買代金の支払い)として認められるか

Xは、契約はAの「無権代理」行為によるものであり、支払部分については追認できないと主張しました。Y側は、Xが夫による契約行為を追認し、直接司法書士との面談で売却意思を示したと反論しました。


裁判所の判断

裁判所は以下の点を重視しました:

  • 売買契約書や委任状は名義上はXのものですが、その署名・押印が本人によるものかは明確でない。
  • ただし、Xが直接司法書士と面談した際に、売却意思や代理委任内容を確認し、異議がなかった事実が認定された。
  • そのため売買契約の成立は有効と認められ、Yが支払った500万円も弁済(代金支払い)として有効と判断されました。

ポイント整理

  • 無権代理行為であっても、本人が後に追認する意思表示をした場合、契約は有効に成立する可能性がある。
  • 売買代金の授受も、追認があれば有効な弁済と評価される。
  • 夫婦間の代理であっても、表見代理(見せかけの代理)は簡単には認められないとの最高裁判決の考え方も影響している。

実務上の示唆

この事例から、不動産取引における代理行為では次の点が重要です:

  • 委任状や代理権の書面だけを信用しないこと
  • 本人と代理人の意志・事実関係を直接確認すること
  • 夫婦間であっても代理権の有無・範囲を慎重に確認する必要がある

実務においては、代理関係の確認手続を丁寧に進めることで、後日の紛争を未然に防ぐことが求められます。

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