売掛金や貸金の返済を求めて内容証明を送ったものの、相手が支払わない。そこで「支払督促」を使って法的回収を図ろうとした矢先に、相手と突然連絡がつかなくなる……。
このような場面で「支払督促はできるのか?」「住所が分からない相手にどう対応すればいいのか?」と不安になる方も多いでしょう。
今回は、相手の住所が分からないケースでの支払督促の可否と、現住所の調査方法について分かりやすく解説します。
そもそも支払督促とは?
支払督促とは、簡易裁判所の書記官が債権者(お金を貸した側)の申立てに基づいて、債務者(お金を借りた側)に支払いを命じる手続きです。
相手が支払督促に異議を出さなければ、強制執行に進むことができるという特徴があり、裁判よりも迅速・簡易な回収手段として多く利用されています。
ただし、支払督促を使うには「相手に督促状を確実に送達できる」ことが前提です。
住所が分からないと、支払督促はできない
相手方の住所が不明な場合、残念ながら支払督促は利用できません。
通常の訴訟では、相手の所在が不明でも「公示送達」(裁判所の掲示板で通知)という手段で進められることがありますが、支払督促では公示送達が認められていないため、相手の正確な住所が必要になります。
つまり、住所不明=支払督促不能というのが原則です。
例外的に「仮執行宣言付き支払督促」には公示送達が可能
ひとつ注意したいのは、相手に一度でも支払督促が届いたあとであれば、仮執行宣言付き支払督促については公示送達が可能になるという点です。
つまり、最初の督促が届いた後に相手が行方をくらましたとしても、次の手続き(仮執行)には進める場合があります。
支払督促ができないケースは他にもある
以下の場合も、支払督促を利用することはできません:
- 金銭以外の請求(建物明渡し、登記手続など)
- 相手が海外在住(日本国内で送達できないため)
このような場合は、通常の訴訟手続や他の回収方法を検討する必要があります。
相手の住所を調べる方法
支払督促を行いたいなら、まずは相手の現在の住所を特定することが必須です。
以下のような方法で調査が可能です。
① 弁護士による「職務上請求」で住民票を調査
過去の住所や本籍地が分かっていれば、弁護士がその情報をもとに「職務上請求」を行い、戸籍の附票などから現住所を特定できる場合があります。
これは弁護士に認められた正式な手続きで、債権回収の実務で頻繁に用いられています。
② 電話番号から「23条照会」を使う
相手の携帯や固定電話番号が分かっている場合、弁護士が弁護士会照会(23条照会)を通じて電話会社に住所照会をすることも可能です。
ただし、すでに解約されている番号の場合、取得できるのは解約時の住所までで、最新の情報ではない点に注意が必要です。
住所が特定できたらどうする?
相手の現住所が判明した場合、その住所を管轄する簡易裁判所に対して支払督促を申し立てることができます。
なお、すでに別の裁判所に申し立てていた場合は、いったん取り下げてから、再度正しい裁判所に申し立て直す必要があります。
まとめ
相手の住所が分からず「支払督促ができない」となっても、調査次第で現住所を突き止めることは可能です。
とくに、弁護士であれば法的に認められた手段(職務上請求や弁護士会照会)で調査できますし、所在調査のノウハウも持ち合わせています。
債務者が行方不明になったからといって、泣き寝入りする必要はありません。
まずは弁護士に相談し、今できる最善の方法を一緒に検討してみましょう。
【監修】

- 代表弁護士
- 年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
まずはお気軽にご相談ください。
詳細は弁護士紹介ページをご覧ください。