2023年(令和5年)6月1日、消費者契約法の改正が施行されました。今回の改正では、事業者による不当な勧誘や不明確な契約内容に対する消費者保護を強化するため、次の4つの柱が導入・拡充されました。
- 契約取消権の範囲の拡大
- 解約料に関する説明の努力義務
- 免責条項(損害賠償の上限など)の明確化
- 事業者の情報提供義務・配慮義務の拡充
それぞれの改正点について詳しく見ていきましょう。
1. 契約の取消権が拡大されました
これまでも、不当な勧誘によって消費者が誤認・困惑した場合は契約を取り消すことができましたが、今回の改正で**新たに3つの「困惑類型」**が追加され、取り消しの対象が広がりました。
▼ 誤認に基づく契約取消(従来からの類型)
- 不実告知:事実と異なる説明をされた
- 断定的判断の提供:不確かなことを「必ずもうかる」などと断定された
- 不利益事実の不告知:重要な不利な情報を意図的に隠された
▼ 困惑に基づく契約取消(新たに3類型を追加)
以下のような「心理的圧力」による契約も、取消しが可能になります。
- 不退去:営業担当者が帰らず居座り続けた
- 退去妨害:販売店などで出口をふさがれ帰れなかった
- 【新設】退去困難な場所に同行して勧誘された(例:旅行先、車中、病院など)
- 【新設】威迫により相談を妨げられた(例:家族に相談させないよう威圧)
- 不安をあおる説明(例:「今すぐ契約しないと大変なことになる」など)
- デート商法
- 高齢者等の弱者に対する不安のあおり
- 霊感商法等、合理性に乏しい根拠での勧誘
- 【新設】契約前に代金の支払いを強要された
- 過量契約(生活上不要なほど多くの量・回数の商品を契約させられる)
2. 解約料に関する説明義務(努力義務)が新設されました
契約を途中で解約する場合、多くの契約では「解約料」や「違約金」が発生します。これについて、事業者は解約料の算定根拠を消費者に説明する努力義務を負うことになりました。
これまでも、解約料が「平均的な損害」を超えている場合は無効とされていましたが、「平均的な損害」という概念があいまいで、事業者と消費者の間に認識のズレが生じやすい問題がありました。
そこで、今回の改正で、消費者が納得できるよう事前に根拠を説明することが求められるようになったのです。
3. 免責の範囲が不明確な条項は無効になります
たとえば、契約書に以下のような表現がある場合:
「法令に違反しない限り、損害賠償は10万円を上限とする」
このような責任の範囲があいまいな条項は、今回の改正により無効とされます。
これまでの消費者契約法でも、事業者が故意または重過失で消費者に損害を与えた場合、その責任を免れることはできませんでした。
今回の改正では、軽過失を含めた場合でも、その範囲が不明確であれば無効とされるため、事業者は責任の明確化が必要になります。
4. 事業者の「努力義務」も拡充されました
事業者は、次のような努力義務を果たすことが求められます。
- 契約の解除権に関する情報を、消費者に分かりやすく提供する
- 契約締結時、消費者の年齢、心身の状態、知識、経験などを総合的に配慮する
これまでは「知識と経験」のみを考慮すれば足りるとされていましたが、今回の改正で「高齢者」「障害のある方」「日本語に不慣れな方」など、より広範な配慮が求められるようになっています。
まとめ
2023年の消費者契約法改正は、消費者が不当な勧誘や不透明な契約から身を守るための武器を強化した内容となっています。
契約書の内容に少しでも疑問があるときや、強引な勧誘を受けたと感じたときには、契約を結ぶ前に必ず専門家に相談することが重要です。
不利な契約を結ばないためにも、改正内容を正しく理解しておきましょう。
【監修】

- 代表弁護士
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