SNS型投資詐欺、ロマンス詐欺、フィッシング詐欺——手口は年々巧妙化し、被害額も高額化しています。「騙されたお金を取り戻したい」と思ったとき、どのような手段があり、どこまで回収できるのでしょうか。本記事では、詐欺被害に遭ったお金の回収方法の全体像と、被害直後にやるべきこと、注意すべき「二次被害」について弁護士が解説します。

まず知っておきたい——警察への相談だけではお金は返ってこない

誤解されがちですが、警察の役割は犯人の検挙・処罰(刑事手続)であり、被害金の回収(民事手続)ではありません。犯人が逮捕され有罪になっても、それだけでお金が戻ってくるわけではないのです。被害金を取り戻すには、口座凍結による被害回復分配金の受け取りや、加害者に対する損害賠償請求・不当利得返還請求といった民事上の手段を、被害者自身(または代理人弁護士)が進める必要があります。

もっとも、警察への被害届・相談が無意味ということでは決してありません。口座凍結の端緒になり、刑事記録は後の民事裁判の証拠にもなります。「刑事は警察、回収は民事」という役割分担を理解して、両輪で動くことが重要です。

詐欺の被害金を取り戻したい方へ

口座の凍結や相手の特定は、早く動くほど回収できる可能性が高まります。回収の見込みと費用の見通しを、ご相談の段階でお伝えします。

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振込先口座の凍結と被害回復分配金——振り込め詐欺救済法

犯人の口座にお金を振り込んでしまった場合、最初に検討すべきは振り込め詐欺救済法に基づく口座凍結です。警察と振込先の金融機関に連絡すると、金融機関の判断で口座が凍結され、預金保険機構の公告手続を経て、凍結口座の残高から被害者に「被害回復分配金」が支払われます。

ただし、この制度には限界があります。分配の原資はあくまで凍結時点の口座残高であり、犯人がすでに引き出していれば戻りません。被害者が複数いれば残高は被害額に応じて按分され、支払いまでには90日以上の期間を要します。だからこそ、被害に気づいたら1時間でも早く連絡して凍結させることが回収額を左右します。

相手を特定して民事請求する方法

口座凍結で回収しきれない部分は、加害者本人への損害賠償請求(民法709条)や不当利得返還請求で追及します。問題は「相手が誰か分からない」ことですが、特定の手段はあります。

  • 弁護士会照会(弁護士法23条の2):振込先口座の名義人情報を金融機関に照会し、氏名・住所を特定する
  • 発信者情報開示請求:SNSやマッチングアプリ経由の詐欺では、プロバイダ等への開示請求で相手を特定できる場合がある
  • 刑事記録の活用:犯人が起訴された場合、刑事確定記録の閲覧等を通じて民事請求の証拠を得る

また、判例上、詐欺グループに口座を提供した名義人に対して共同不法行為責任を問い得るケースもあり、実行犯本人に資力がなくても回収の糸口が残されていることがあります。

回収可能性の見極めと「二次被害」への注意

誠実にお伝えしなければならないのは、すべての詐欺被害が回収できるわけではないという現実です。暗号資産で送金させる手口や海外口座への送金は、資金の追跡・差押えが極めて困難です。回収の見込みが乏しいのに費用だけがかかる「費用倒れ」を避けるため、当事務所では手口・送金方法・判明している相手方の情報から回収可能性を率直に見立てたうえで、進めるかどうかをご判断いただいています。

あわせて注意していただきたいのが二次被害です。「被害金を取り戻します」とうたう探偵業者や自称支援団体が、着手金だけ受け取って何もしない——という詐欺被害者を狙った二次被害が後を絶ちません。被害回復のための交渉や請求を業として行えるのは弁護士だけです(弁護士法72条)。「弁護士以外」からの回収勧誘は、それ自体を疑ってください。

被害に気づいたら直ちにやるべきこと

  • ①追加の送金を止める(「手数料を払えば返金される」は典型的な追い込みの手口です)
  • ②振込先の金融機関と警察(#9110または最寄りの警察署)に連絡し、口座凍結を依頼する
  • ③相手とのやり取り(LINE・メール・SNSのプロフィール・振込明細)をすべて保存する(相手にブロックされても消えないようスクリーンショット推奨)
  • ④できるだけ早く弁護士に相談する

お金は返ってくるのか——回収可能性を分ける4つの要素

「詐欺にあったお金は返ってくるのか」は、最も多くいただくご質問です。結論から言えば、返ってくるケースと、残念ながら極めて難しいケースがはっきり分かれます。分かれ目になるのは、次の4点です。

  • ①どうやって送ったか:銀行振込であれば口座凍結と分配金の制度に乗せられるため、回収の可能性が最も高い類型です。一方、暗号資産での送金、電子マネーのコード送付、現金の手渡しや郵送は、資金の追跡と差押えが著しく困難になります。
  • ②気づくまでにどれだけ時間が経ったか:口座凍結は、犯人が引き出す前に間に合うかどうかがすべてです。振り込んだ当日〜翌営業日に動けたかで結果が大きく変わります。数週間が経過している場合、残高はほぼ残っていないのが実情です。
  • ③相手を特定できるか:振込先口座の名義人は弁護士会照会で判明することが多く、SNSやマッチングアプリ経由であれば発信者情報開示請求が使える場合があります。逆に、相手の情報が匿名アカウントのみで送金先も海外となると、特定の入口がありません。
  • ④相手に資力があるか:判決を取っても、相手に財産がなければ現実の回収にはつながりません。ただし、実行犯本人に資力がなくても、口座を提供した名義人に対して共同不法行為責任を追及できる場合があり、そこに回収の糸口が残ることがあります。

当事務所では、ご相談の段階でこの4点を伺い、回収可能性の見立てと、かかる費用の見込みを先にお伝えします。見込みが乏しいのに費用だけがかさむ「費用倒れ」は、被害に遭われた方にとって二重の負担になるためです。

被害回復分配金は「いくら」戻るのか

振り込め詐欺救済法による被害回復分配金は、被害額の全額が戻る制度ではありません。押さえておくべき仕組みは次のとおりです。

  • 原資は凍結時点の口座残高だけです。犯人がすでに引き出していれば、分配の原資自体が存在しません。
  • 被害者が複数いる場合は按分されます。残高100万円に対して被害総額が1,000万円であれば、戻るのは被害額の1割程度という計算になります。
  • 口座に残っていた資金が1,000円未満のときは分配されません(消滅預金等債権の額が1,000円未満の場合。振り込め詐欺救済法8条3項)。
  • 支払いまでに90日以上かかります。金融機関による取引停止措置のあと、預金保険機構による債権消滅手続の公告(60日以上)と支払手続の公告(30日以上)を経て、ようやく支払いに至るためです。

つまり分配金は「初動が早ければ一定額が戻る可能性のある制度」であって、これだけで被害の全額が回復するものではありません。凍結で取り切れなかった部分は、加害者本人や口座名義人に対する民事請求で追及することになります。

なお、不法行為に基づく損害賠償請求権には、損害および加害者を知った時から3年という消滅時効があります(民法724条1号)。相手が判明してから動かずにいると、請求権そのものを失いかねません。

まとめ

詐欺被害金の回収は、①口座凍結による被害回復分配金、②相手を特定しての民事請求、という二本柱で進めます。時間が経つほど資金は散逸し回収可能性は下がるため、初動の速さがすべてです。また、被害回復をうたう弁護士以外の業者には二次被害のリスクがあります。詐欺被害でお困りの方は、弁護士法人横浜キャピタル法律事務所までお問い合わせください。回収可能性の見立てを含めて誠実に対応いたします。

よくある質問

Q. 詐欺にあったお金は返ってくるのでしょうか?

銀行振込で送金し、被害に気づいてすぐ口座凍結を依頼できた場合は、被害回復分配金として一部が戻る可能性があります。ただし戻る額は凍結時点の残高を被害者間で按分した金額にとどまります。暗号資産や電子マネー、現金手渡しの場合は、資金の追跡が困難で回収は相当に難しくなります。

Q. 警察に被害届を出せば、お金は戻ってきますか?

戻りません。警察の役割は犯人の検挙と処罰であり、被害金の回収は民事手続です。ただし被害届は口座凍結の端緒になり、刑事記録はのちの民事請求で証拠として活用できます。「刑事は警察、回収は民事」と割り切って、両方を並行して進めるのが正しい対応です。

Q. 口座凍結は、いつまでに連絡すれば間に合いますか?

明確な期限はありませんが、実務上は振り込んだその日から翌営業日までが勝負です。詐欺グループは入金を確認するとすぐに引き出すため、時間が経つほど残高は残っていません。夜間や休日でも、金融機関の緊急連絡窓口と警察相談専用電話(#9110)への連絡は可能です。

Q. 暗号資産(ビットコインなど)で送ってしまいました。回収できますか?

率直に申し上げて、極めて困難です。送金先が海外の取引所や個人のウォレットである場合、名義人の特定にも資産の差押えにも入口がありません。国内の取引所を経由している場合に限り、取引所への照会から特定につながる可能性が残ります。まずはどの経路で送金したかを整理したうえでご相談ください。

Q. 犯人が逮捕されれば、お金は返してもらえますか?

自動的には戻りません。有罪判決は刑事上の責任を確定させるものであり、被害弁償は別に求める必要があります。もっとも、加害者側が示談を希望して被害弁償を申し出るケースはあり、刑事手続の進行は民事回収の交渉材料になります。示談の条件は慎重に検討すべきなので、応じる前に弁護士にご相談ください。

Q. 費用倒れが心配です。依頼する前に見通しは分かりますか?

ご相談の段階で、送金方法・経過日数・判明している相手方の情報から回収可能性を見立て、費用の見込みとあわせてお伝えします。回収の見込みが乏しいと判断した場合は、その旨を率直にお伝えします。なお、被害回復を業として行えるのは弁護士だけです(弁護士法72条)。「取り戻します」とうたう弁護士以外の業者は、二次被害を疑ってください。

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米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
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