「遺産分割で揉めたくないから、実家は兄弟で共有にした」——一見公平で穏当な解決に見えますが、不動産の共有名義は将来のトラブルの種を残す選択です。売却も活用も一人では決められず、世代交代のたびに共有者が増えていきます。本記事では、相続不動産を共有名義にするリスクと、すでに共有になってしまった場合の解消方法を弁護士が解説します。

なぜ相続で共有名義が生まれるのか

相続財産の中でも不動産は「分けにくい」財産の代表です。預貯金なら1円単位で分けられますが、実家の土地建物はそうはいきません。その結果、次のような経緯で共有名義が生まれます。

  • 遺産分割協議がまとまらず、とりあえず法定相続分どおりの共有で登記した
  • 「実家は思い出の場所だから兄弟みんなのものに」と情緒的な理由で共有にした
  • 遺産の大半が不動産で、公平に分けるには共有しかないと考えた

横浜・神奈川エリアのように地価が高い地域では、実家の不動産が遺産総額の大部分を占めることが多く、「公平に分けるための共有」が選ばれやすい傾向があります。しかし、その場の合意のしやすさと引き換えに、将来に大きな負担を先送りしているのです。

共有名義の5つのリスク

  • ①売却・活用に全員の同意が必要:不動産全体の売却や建替えは共有者全員の同意がなければできません。一人でも反対すれば何も動きません。
  • ②固定資産税・管理費の負担で揉める:税金や修繕費は共有者が持分に応じて負担しますが、支払わない共有者がいると立て替えた人との間で紛争になります。
  • ③二次相続で共有者がねずみ算式に増える:共有者が亡くなると、その持分はさらにその相続人へ相続されます。兄弟2人の共有が、一世代後には従兄弟同士5人の共有になる——ということが現実に起こり、面識のない共有者や所在不明者が現れて収拾がつかなくなります。
  • ④持分だけ売却されるリスク:共有持分は各共有者が自由に売却でき、買取業者が共有者として入ってくる可能性があります。
  • ⑤人間関係の悪化:使用している共有者とそうでない共有者の不公平感から、親族関係そのものが壊れるケースが少なくありません。

相続登記の義務化で「塩漬け」にできなくなった

2024年4月から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記をしなければ、10万円以下の過料の対象となりました。これまでのように「登記せず放置」という選択肢が事実上なくなったことで、注意すべき現象が起きています。それは、期限に追われて「とりあえず法定相続分で共有登記」を選んでしまうケースの増加です。

共有登記は義務を果たす手段としては手軽ですが、前述のリスクをすべて抱え込む選択でもあります。遺産分割協議がすぐにまとまらない場合には、「相続人申告登記」という簡易な手続きで義務を暫定的に果たしつつ、じっくり協議して単独名義への着地を目指す方法があります。期限のプレッシャーから安易に共有登記へ流れる前に、選択肢を確認してください。

すでに共有名義になっている場合の解消方法

すでに共有状態にある不動産は、次の方法で解消できます。

  • ①共有者間での持分売買・贈与:一人が他の共有者の持分を買い取り、単独所有にする最もシンプルな方法です。
  • ②全員で第三者に売却(換価):全員の同意で不動産全体を売却し、代金を持分割合で分けます。共有者間に使用の偏りがなければ最も公平です。
  • ③土地の分筆(現物分割):広い土地であれば、持分に応じて分筆してそれぞれの単独所有とする方法も考えられます。
  • ④共有物分割請求:協議がまとまらなければ、最終手段として裁判所に共有物分割を請求できます。裁判所は現物分割・賠償分割・換価分割(競売を含む)のいずれかで共有を解消します。

共有物分割請求は「共有状態からの離脱を求める権利」であり、他の共有者は原則として拒めません。ただし競売による換価は市場価格を下回りがちで、全員にとって不本意な結果になることもあるため、訴訟前の交渉段階でいかに合理的な着地点を作るかが弁護士の腕の見せどころです。

これから遺産分割する方へ——共有を避ける分け方

これから遺産分割協議を行う方は、共有を避ける方向で検討することを強くおすすめします。実家を継ぐ相続人が他の相続人に代償金を支払う「代償分割」、売却して代金を分ける「換価分割」が代表的な方法です。実家に住み続けたい配偶者がいる場合には、所有権を子に渡しつつ配偶者の居住を保護する「配偶者居住権」の活用も選択肢になります。誰も住む予定のない実家であれば、感情的なハードルはあっても換価分割が将来の紛争を最も確実に防ぎます。

まとめ

相続不動産の共有名義は、「その場の公平」と引き換えに、売却困難・費用負担・共有者の増加といった重いリスクを将来へ先送りする選択です。相続登記義務化により安易な共有登記が増えることが懸念されますが、相続人申告登記などの代替手段もあります。すでに共有になっている場合も、持分売買や共有物分割請求など解消のルートは複数あります。相続不動産の共有問題にお悩みの方は、弁護士法人横浜キャピタル法律事務所までお問い合わせください。

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