貸したお金や売掛金が期日に払われないとき、元本と一緒に「遅延損害金」を請求できます。ところが、実際に請求書や内容証明を作る段になると、「何%で計算するのか」「いつから数えるのか」「契約書に書いた利率は全部有効なのか」で手が止まる方が少なくありません。

本記事では、債権者の立場から、遅延損害金の利率・起算日・計算式を具体的な数字で整理します。2020年の民法改正前に遅れていた債権の扱いや、利息制限法による上限にも触れます。

結論:約定がなければ年3%、遅れた日の翌日から日割りで計算する

金銭の支払いが遅れたときの損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で決まります(民法419条1項)。法定利率は2020年4月1日から年3%です(民法404条2項)。3年ごとに見直す仕組みですが、2026年4月1日から2029年3月31日までの期も年3%のまま据え置かれています(法務省告示)。

契約で法定利率より高い利率を決めていれば、その約定利率によります(民法419条1項ただし書)。また、金銭債務の不履行では、債権者は損害が実際にいくら生じたかを証明する必要がなく、債務者は不可抗力を理由に責任を免れることもできません(同条2項・3項)。

1. 遅延損害金の計算式と具体例

計算式は次のとおりです。

遅延損害金 = 元本 × 利率 × 遅れた日数 ÷ 365

たとえば300万円を年3%で計算すると、次のようになります。

遅れた期間遅延損害金(元本300万円・年3%)
30日7,397円
100日24,657円
1年(365日)90,000円
3年270,000円

年3%は低く感じるかもしれませんが、回収が数年にわたると無視できない金額になります。請求するときは「元本○円と、○年○月○日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金」という形で、終わりの日を決めずに請求するのが通常です。

2. いつから数えるか――期限の決め方で起算日が変わる

遅延損害金は、債務者が「遅滞の責任」を負った時から発生します。いつ遅滞になるかは、支払期限の決め方によって異なります(民法412条)。

期限の決め方遅滞になる時遅延損害金の起算日
確定期限(「10月31日に返す」など)期限が来た時期限の翌日
不確定期限(「ボーナスが出たら返す」など)期限到来後に請求を受けた時か、期限到来を知った時の早いほうその翌日
期限の定めなし履行の請求を受けた時請求を受けた日の翌日

「いつでも返して」という個人間の貸金は要注意

返済期限を決めずにお金を貸した場合、貸主は相当の期間を定めて返還を催告できます(民法591条1項)。実務書では、期限の定めのない貸金は、催告から相当期間が経過した時から遅延損害金が発生すると説明されています。

つまり、期限を決めずに貸したお金は、請求しない限り遅延損害金が始まりません。「そのうち返してくれるだろう」と待っている間は、遅延損害金は1円も増えていないということです。返済を求めるなら、返還期限を明記した書面(内容証明郵便など)で催告し、起算点をはっきりさせておくことが大切です。なお、訴訟になった場合は、訴状が相手に届いた日の翌日を起算日として請求する例も多く見られます。

売掛金の場合は、請求書や取引基本契約で支払期日が決まっているのが通常なので、その期日の翌日が起算日になります。

3. 2020年3月以前に遅れていた債権は年5%

2020年4月1日の改正民法施行前に、すでに債務者が遅滞の責任を負っていた債権については、改正後の規定ではなく従前の例によります(改正法附則17条3項)。改正前の民法の法定利率は年5%でした。

判断の基準は「遅延損害金が発生した各日」ではなく、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点です。2019年に返済期限が過ぎていた貸金なら、今日請求する分も年5%で計算します。

また、改正前の商法には事業者間の取引に適用される年6%の商事法定利率がありましたが、改正に伴い廃止されました。2020年4月1日以降に初めて遅滞になった売掛金に、年6%を当てはめることはできません。

4. 契約で利率を決めていた場合――利息制限法の上限

借用書や契約書で「遅延損害金は年○%」と決めていれば、その約定によります。ただし、お金の貸し借り(金銭消費貸借)では、利息制限法が上限を定めています。

利息制限法4条1項は、遅延損害金の予定額が、同法1条の制限利率の1.46倍を超える部分を無効とします。違約金という名目でも、賠償額の予定とみなされます(同条2項)。元本額ごとの上限は次のとおりです。

元本利息の上限(1条)遅延損害金の上限(4条)
10万円未満年20%年29.2%
10万円以上100万円未満年18%年26.28%
100万円以上年15%年21.9%

業として貸付けを行う者の貸付け(営業的金銭消費貸借)では、遅延損害金の上限は年20%です(利息制限法7条1項)。上限を超えて約定していても、契約全体が無効になるわけではなく、超えた部分だけが無効になります。

一方、売掛金のような貸し借り以外の代金債務で、相手が消費者の場合は、消費者契約法9条1項2号により年14.6%を超える部分が無効になります。事業者間の取引には、この制限はありません。

5. 請求するときの実務上の注意点

第一に、元本と遅延損害金を分けて書くことです。内容証明でも訴状でも、元本の額、起算日、利率を分けて示しておけば、相手方も金額を検証でき、交渉が進みやすくなります。

第二に、一部入金があったときの充当です。相手から一部だけ払われた場合、その入金を元本と遅延損害金のどちらに充てるかで、その後の遅延損害金の額が変わります。入金があった日と金額は必ず記録し、残額を計算し直してから次の請求をしてください。

第三に、時効です。遅延損害金ばかりに気をとられているうちに、元本の時効が迫っていることがあります。時効の数え方と止め方は貸金返還請求の消滅時効で解説しています。

遅延損害金を含めた請求額の計算、起算日の設定、内容証明の作成から回収までまとめて任せたい場合は、債権回収の実務に慣れた弁護士にご相談ください。

まとめ

遅延損害金は、約定がなければ年3%(2020年3月以前に遅滞になった債権は年5%)で、遅滞になった日の翌日から日割りで計算します。期限を決めずに貸したお金は、催告しなければ遅延損害金が始まりません。約定利率は利息制限法の上限の範囲でのみ有効です。正しい金額で請求することは、相手方との交渉でも訴訟でも、こちらの主張の信頼性を支えます。

NEXT STEP

依頼の前に、まず相談したい方へ

いきなりの正式依頼が不安な方には、
気軽にご利用いただけるサービスをご用意しています。

MEMBERSHIP
¥1,000/月(税込)
プレミアムメンバーシップ
LINEからいつでも何度でも弁護士に相談可能。事前予約不要で気軽にご利用いただけます。
  • —売掛金・取引先トラブルの相談
  • —債権回収の見通しを確認したい
  • —LINEで24時間メッセージ送信可
  • —月1,000円・いつでも解約OK
メンバーシップの詳細を見る →
RETAINER
顧問契約
売掛金トラブルを予防したい事業者様へ
取引先との契約整備から回収対応まで継続サポート。債権トラブルを未然に防ぐ体制づくりをお手伝いします。
  • —売掛金・未払金トラブルの予防
  • —取引先との契約書チェック・作成
  • —回収着手時は優先対応
  • —継続的な法務リスク管理
顧問契約の詳細を見る →

まずはお気軽にご連絡ください。どのサービスが適しているかも含めてご案内します。


※お電話の受付時間は平日9:30〜17:00です。受付時間外や土曜・日曜・祝日のお問い合わせは、下記のWEB予約フォームまたはLINEをご利用ください。翌営業日以降、順次ご連絡いたします。

【監修】

米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
まずはお気軽にご相談ください。
詳細は弁護士紹介ページをご覧ください。
横浜

LINEでお問い合わせ

※スマートフォンでご覧の方はボタンをタップして友だち追加できます。

お電話でのご予約・お問い合わせ

※スマートフォンはボタンをタップするとそのまま発信できます。

営業時間:平日9:30~17:00