ある日突然、裁判所から訴状や期日への呼出状が届いた――。裁判は平日にしか行われないため、「仕事があって行けない」という方は少なくありません。では、裁判期日に欠席するとどうなるのでしょうか。放置してよいのか、当日体調を崩したらどうすればよいのか、民事・刑事に分けて解説します。
民事裁判を欠席するとどうなる?――「擬制自白」と欠席判決
民事裁判の場合、訴状に対する反論(答弁書)を提出せずに裁判を欠席すると、相手方の主張をすべて認めたという扱いになります。これを擬制自白(民事訴訟法159条)といいます。
擬制自白が成立すると、裁判所は第1回期日で審理を終え、そのまま原告の請求どおりの判決(いわゆる欠席判決)を言い渡すのが通常です。「行かなければ裁判が進まない」は完全な誤解で、欠席したまま負けが確定していくのが実際の姿です。
もっとも、一方的に指定された期日までに反論できなければ負け、というのは酷ですので、救済策があります。期日前に答弁書(「請求棄却を求める。詳細な反論は追って行う」という内容で構いません)を提出しておけば、最初の期日に限り、出席しなくても答弁書を陳述したものと扱われます(擬制陳述・民事訴訟法158条)。ただし、2回目以降の期日には原則として出席が必要です。
なお、簡易裁判所の事件には特則があり、2回目以降の期日でも書面を提出しておけば欠席できます(民事訴訟法277条)。少額の貸金やクレジット債権の裁判が簡易裁判所に多いのはこのためですが、書面での反論が不十分なら結局不利になる点は変わりません。
当日どうしても行けなくなったら(体調不良・急用)
「期日の朝に高熱が出た」「家族の急病で行けない」という場合、絶対にしてはいけないのが無断欠席です。必ず、期日が始まる前に担当部の裁判所書記官(呼出状に電話番号が記載されています)へ連絡してください。弁護士に依頼している場合は弁護士へ連絡すれば足ります。
事前に連絡すれば、期日の変更(延期)や、電話会議システムによる参加などの対応が検討されます。やむを得ない事情での欠席と無断欠席とでは、裁判所の心証も、その後の手続きの扱いもまったく異なります。
訴えた側(原告)が欠席したら?
欠席のリスクは被告だけの問題ではありません。原告が最初の期日を欠席した場合、訴状を陳述したものとみなして手続きが進むことはありますが、双方が欠席すると裁判は「休止」となり、1か月以内にどちらからも期日指定の申立てがなければ、訴えを取り下げたものとみなされます(民事訴訟法263条)。せっかく起こした裁判が消滅してしまうため、原告側も期日管理は重要です。
刑事事件の場合
検察官が特定の人を起訴した場合、その人は刑事裁判において被告人と呼ばれます。刑事裁判は民事と逆で、被告人が出席しなければ開廷できないのが原則です。ただし、以下の各場合には被告人の出席を要しないとされています。
- ①被告人が法人で代理人を出席させるとき
- ②50万円以下の罰金又は科料に当たる事件であるとき
- ③拘留に当たる事件の判決宣告や、長期3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円を超える罰金に当たる事件の初回ないし判決宣告で裁判所が認めるとき
正当な理由なく出頭しない場合には、勾引(強制的に連れて行かれること)や保釈の取消しなどの不利益もあり得るため、民事以上に欠席は許されないと考えてください。
欠席判決が出てしまった後にできること
「気づいたら判決が出ていた」という場合でも、打つ手が残っていることがあります。
- 控訴──判決書(または調書)の送達を受けた日から2週間以内であれば、控訴して争うことができます
- 支払督促への異議──届いたのが判決ではなく支払督促なら、2週間以内に督促異議を申し立てることで通常の裁判に移行できます
- 任意の交渉──判決が確定してしまった場合でも、強制執行の前に分割払い等の和解交渉ができる場合があります
確定した判決を放置すると、ある日突然預金口座や給与を差し押さえられることになります。期限との勝負なので、判決や督促が届いたら一日でも早く動くことが重要です。
まとめ
- 民事裁判を無断欠席すると、擬制自白により相手の言い分どおりの欠席判決が出る。
- 答弁書を出しておけば初回は欠席可(簡易裁判所は2回目以降も書面対応可)。
- 当日行けなくなったら、無断欠席せず必ず裁判所へ事前連絡する。
- 判決が出てしまっても、送達から2週間以内なら控訴で争える。
訴状や呼出状を受け取りながら「大ごとにはならないだろう」と放置すると、預金や給与の差押えに直結します。裁判への対応でお困りの際は当事務所にご相談ください。
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