保育園や幼稚園といった乳幼児を取り扱う現場では、意外にもカスハラ(客による嫌がらせ)が発生するケースがあります。特に、いわゆる「モンスターペアレント」と呼ばれる悪質な保護者からの被害は深刻です。ここでは、カスハラが発生した際の対応と、事前に取れる予防策について解説します。
カスハラが発生したときの対応
1. 事実を把握し証拠を押さえる
カスハラ被害に対応する際は、まず事実関係を正確に把握し、録音や録画などの客観的な証拠を押さえることが重要です。
証拠がなければ、損害賠償請求や刑事告訴などの法的手段を取ることが難しくなります。日頃から証拠を収集できる体制を整えておくことが大切です。
2. 職員を守る
カスハラ被害によって職員が過度なストレスを受けると、離職やモチベーション低下のリスクがあります。
対応方法としては、園長や経営者が積極的に加害者対応に当たる、担当者を適宜変更する、精神面のフォロー(ストレスチェックや健康相談)を行うなどが挙げられます。
3. 冷静かつ毅然とした対応
カスハラ加害者の要求に安易に譲歩すると、行為を助長することになります。一方で、感情的に攻撃的な対応をすると、園側の不適切さを指摘される可能性もあります。
冷静かつ毅然とした態度で対応することが、被害を拡大させない鍵です。
4. 弁護士に相談
カスハラ被害が発生したら、早期に弁護士へ相談することが重要です。弁護士は以下の点について助言できます。
- 収集すべき証拠
- 被害を受けた職員へのフォロー方法
- 加害者への対応方針
- 今後の防止策
平時から顧問弁護士と連携しておくことで、予防や対応の質を高めることも可能です。
保育園・幼稚園でできるカスハラ対策
1. 保護者へのルール共有
保護者に対して園のルールやカスハラ禁止の方針を明確に伝えることで、悪質な行為の抑止効果が期待できます。具体的な禁止行為を示すと、一般の保護者は行動を控えるでしょう。
2. クレーム対応は園長や主任が同席
クレーム対応時に園長や主任が同席することで、画一的かつ適切な対応が可能になります。初動対応の誤りを防ぐことができ、職員の負担軽減にもつながります。
3. カスハラ対策マニュアルの作成
対応手順をマニュアル化することで、職員は迷わず適切に行動できます。これによりストレスも軽減され、被害の影響を最小化できます。
4. 顧問弁護士との連携
平時から園の状況を把握している顧問弁護士と連携することで、研修やマニュアル作成などの予防活動も円滑に進められます。被害発生前に対策を講じることが重要です。
カスハラ対策を怠った場合のリスク
- 職員の離職
過剰なストレスは離職につながり、人手不足の保育現場に大きな打撃を与えます。 - 保育の質の低下
職員の離職やストレスの蓄積により、保育の質が低下するおそれがあります。 - 行政指導
法定の職員数が確保できない場合、行政指導や補助金の減額、社会的信用の喪失などのリスクがあります。
カスハラが起こりやすい理由
- 感情的になりやすい環境
子どもに関わる現場は、職員・保護者双方が感情的になりやすい特性があります。 - 保護者の仕事によるストレス
仕事のストレスがカスハラ行為の引き金になることがあります。 - コミュニケーション不足
子どもの受け渡し時間の短さや連絡帳など、限られた手段でのやり取りは誤解を生みやすくなります。
まとめ
保育園・幼稚園におけるカスハラは、職員の離職や保育の質低下などの深刻なリスクを伴います。事前のルール共有、マニュアル作成、顧問弁護士との連携などにより、被害を最小限に抑えることが可能です。
当事務所では、保育園・幼稚園をカスハラから守る支援を行っています。お悩みの際には、ぜひご相談ください。弁護士一同、安心して子どもたちに向き合える環境づくりをサポートいたします。
【監修】

- 代表弁護士
- 年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
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