自社の製品が原因で消費者がケガをしたり、財産に被害を受けたりした場合、製造業者は「製造物責任法(PL法)」に基づいて損害賠償責任を負う可能性があります。
この責任は、過失の有無にかかわらず一定の条件を満たせば認められるため、製造業者にとっては大きなリスクとなり得ます。
PL法とは?
PL法(製造物責任法)は、製造物に欠陥があり、それによって消費者の生命・身体・財産に被害が生じた場合、製造業者が損害賠償責任を負うことを定めた法律です。
(1)誰が責任を負うのか
責任を負うのは「製造業者等」とされ、次のような事業者が含まれます。
- 製造・加工・輸入を業として行う者
- 自社名や商標を付して販売する者
- 実質的に製造者と認められる表示をしている者
(2)責任が認められる要件
製造物責任が成立するには、次の3つが必要です。
- 製造物の欠陥(通常有すべき安全性を欠いていること)
- 損害(消費者に生命・身体・財産の被害があること)
- 因果関係(欠陥と損害が結びついていること)
(3)不法行為との違い
一般的な不法行為責任(民法709条)は「過失」が必要ですが、PL法では過失の有無を問わず責任を負います。いわゆる「無過失責任」が特徴です。
クレームを受けた場合の対応ポイント
製造物責任を問われた場合、次の手順で冷静に対応することが重要です。
(1)責任の有無を確認する
まずは欠陥の有無、損害の内容、因果関係を整理し、自社に責任が及ぶのかを客観的に検討します。
(2)免責事由の検討
PL法では、製造業者に一定の免責が認められています。
- 開発危険の抗弁:当時の科学水準では欠陥を認識できなかった
- 部品製造業者の抗弁:他社の設計指示による欠陥で、自社に過失がない
該当する場合には、適切に主張することが可能です。
(3)和解による解決も選択肢に
訴訟になると費用や時間的負担が大きいため、消費者側の要求が妥当であれば和解による早期解決を図るのも現実的な方法です。
(4)弁護士に相談する
PL法の適用判断や免責事由の検討は専門的な知識を要します。初期段階から弁護士に相談することで、不要なトラブルや不利益を避けやすくなります。
まとめ
PL法は、企業にとって「過失がなくても責任を負う可能性がある」点で非常に重要な法律です。
- 製品に欠陥がないかを確認する体制づくり
- クレームが入った際の初期対応マニュアルの整備
- 契約書や取引条件における責任分担の明確化
といった日常的なリスク管理が不可欠です。
もし自社製品に関して消費者からクレームや損害賠償請求を受けた場合は、早めに専門家へ相談し、適切に対応することをおすすめします。
【監修】
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