相続や共同購入によって不動産が共有状態になると、「共有者の一人が実家に住み続けて出ていかない」「知らない間に第三者に貸されていた」といったトラブルが起こりがちです。共有不動産には民法上の明確なルールがあり、令和5年4月施行の改正民法で大きく整理されました。本記事では、共有不動産の基本ルールと、独占使用・無断賃貸への対処法を弁護士が解説します。

共有不動産の基本ルール——保存・管理・変更行為

共有不動産について何かをするとき、必要な同意の範囲は行為の性質によって3段階に分かれます。

  • 保存行為(各共有者が単独でできる):雨漏りの修繕、不法占拠者への明渡請求など、現状を維持する行為
  • 管理行為(持分価格の過半数で決定):賃貸借契約の解除、短期の賃貸借の設定、共有物の利用方法の決定など
  • 変更行為(共有者全員の同意が必要):売却、建物の取壊し、大規模な改築など

ここでいう「過半数」は人数ではなく持分価格で数える点に注意が必要です。持分3分の2を持つ共有者は、単独で管理行為を決定できます。また令和5年施行の改正民法により、形状・効用の著しい変更を伴わない「軽微な変更」(外壁の大規模修繕など)は、全員同意ではなく過半数で決定できることが明文化されました。

共有者の一人が独占使用——「出ていけ」とは言えない?

共有不動産のトラブルで最も多いのが、共有者の一人(たとえば実家に住み続ける長男)による独占使用です。ここに大きな落とし穴があります。実は、他の共有者の持分を合計すれば過半数になるとしても、現に占有する共有者に対して当然には明渡しを請求できないというのが最高裁判例(最判昭和41年5月19日)の立場です。共有者は持分に応じて共有物の全部を使用する権原を持つため、少数持分権者であっても「無権利者」として追い出すことはできないのです。

では泣き寝入りかというと、そうではありません。判例は、独占使用する共有者に対し、他の共有者が自己の持分に応じた使用の対価(賃料相当額)を不当利得または損害賠償として請求することを認めています(最判平成12年4月7日)。令和5年改正ではこの考え方が明文化され、共有物を使用する共有者は他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うこと(民法249条2項)、善良な管理者の注意をもって使用する義務を負うこと(同条3項)が規定されました。「明渡しは難しいが、対価は取れる」——これが実務の出発点です。

勝手に賃貸・売却された場合はどうなるか

共有者の一人が無断で第三者に貸していた場合はどうでしょうか。改正民法では、建物なら3年以内、土地なら5年以内の短期賃貸借は「管理行為」として持分の過半数で設定できると明確化されました。裏を返せば、過半数の同意なく一人の共有者が結んだ賃貸借契約は、他の共有者に対抗できません。また、賃料収入は持分割合に応じて各共有者に帰属するため、一人が賃料を独り占めしている場合には、自分の持分に相当する額の支払いを請求できます。

一方、共有持分そのものの売却は各共有者の自由であり、他の共有者の同意は不要です。ある日突然、見知らぬ買取業者が新たな共有者として現れる——という事態も法律上は起こり得ます。持分を勝手に売却された場合の対応は別の機会に詳しく解説しますが、共有状態を放置することはこうしたリスクを抱え続けることを意味します。

令和5年民法改正で変わった共有のルール

所有者不明土地問題への対応として、令和5年4月施行の改正民法は共有制度を大きく見直しました。実務上重要なのは次の点です。

  • 共有者の一部が所在不明・連絡不能でも、裁判所の決定を得て残りの共有者の同意で管理・変更行為ができるようになった
  • 裁判所の決定により、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得し、または第三者への譲渡権限を得る制度が新設された
  • 共有物の管理者を選任する制度が明文化された

「相続で共有になったが、共有者の一人が行方不明で何も決められない」という従来は手詰まりだったケースにも、法的な解決ルートが用意されたのです。

共有トラブルを根本的に解決するには——共有物分割請求

使用対価の請求や賃料の分配は、いわば対症療法です。共有者間の対立が深まっている場合、根本的な解決策は共有状態そのものの解消、すなわち共有物分割請求です。まず共有者間の協議を行い、まとまらなければ裁判所に共有物分割訴訟を提起します。裁判所は、現物分割・賠償分割(一人が取得して他の共有者に代償金を支払う)・換価分割(競売等で売却して代金を分ける)のいずれかの方法で共有関係を解消します。

どの分割方法が有利かはケースによって大きく異なり、交渉の進め方次第で経済的な結果も変わります。共有不動産のトラブルは、対立が固定化する前に弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

共有不動産は「保存・管理・変更」の3段階ルールで動いており、独占使用する共有者への明渡請求は原則できない一方、持分に応じた使用対価の請求は可能です。無断の賃貸は過半数の同意がなければ対抗を受けず、賃料も持分割合で分配を求められます。令和5年改正で所在不明共有者への対応も可能になりました。共有不動産のトラブルにお悩みの方は、弁護士法人横浜キャピタル法律事務所までお問い合わせください。

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