不動産取引では、物件価格や将来収益についての説明が重要な役割を果たします。特に投資用物件を購入する際、将来の賃料収入や売却価格を期待して契約する買主が多いため、過度に有利な説明を受けて契約してしまうリスクに注意が必要です。
今回紹介する裁判例では、買主が実際の市場価値を大幅に上回る価格で投資用マンションを購入した後に損害賠償を求めた事案が取り上げられ、売主業者と勧誘者の共同不法行為が認められました。
(東京地裁令和4年10月27日判決)
事案の概要
買主X(会社員)は、過去に投資用不動産を購入した経験のあるY1(無免許の個人)から、自宅で3物件の購入を勧誘されました。Y1は次のような説明を行いました:
- 「いずれも築年数は古いが、リノベーションすれば毎月賃料収入が得られる」
- 「将来売却する際にも購入価格に近い価格で売れるはず」
この説明を信用して、Xは次のように3物件を購入しました:
| 契約日 | 物件 | 売買代金(万円) |
|---|---|---|
| 令和元年5月11日 | マンション1室(16.25㎡) | 1,000 |
| 令和元年5月19日 | マンション1室(16㎡) | 1,100 |
| 令和元年6月16日 | マンション1室(36.26㎡) | 1,500 |
しかし、裁判所の認定では、各物件の市場価格は㎡当たり12〜22万円/㎡、11〜17万円/㎡、3〜8.5万円/㎡程度にとどまり、Xが支払った代金は市場価値を大幅に超えていました。
さらに、売主業者Y2(不動産業者)は契約締結時には物件を所有しておらず、契約後に転売目的で仕入れていました。また、Y2はXから受領した売買代金の多くをY1に手数料として支払っていました。
Xは、Y1とY2の行為が市場価格よりも大幅に高額であるにもかかわらず、あたかも価格相当の価値があるかのように誤認させたものとして、損害賠償請求訴訟を提起しました。
裁判所の判断(要旨)
裁判所は以下の点を認定し、Y1およびY2の共同不法行為責任を認めました。
価格の誤認を誘発した説明
Y1およびY2は、Xに対して各物件があたかも購入価格相当の価値を有しているように説明し、Xに誤信させたと認められました。これは、実際の市場価格を大幅に上回る価格で購入させる行為であり、不当な価格説明による誤認誘導と判断されました。
共同不法行為の成立
裁判所は、Y1とY2が共謀し、Xに各契約を締結させる目的で共同して価値を誤認させたと認定しました。これにより、共同不法行為責任が成立し、損害賠償が認められました。
名義貸しと宅建士の関与
一方で、重要事項説明書には宅建士Y3の名前が記載されていましたが、裁判所は契約時にY3が同席しておらず説明もしていないとして、Y3については損害賠償責任を認めませんでした。
実務上の注意点
本件は、価格説明のあり方とそれに関連する法的責任について重要な示唆を与えています。
■ 価値の説明は市場データに基づく具体性が必要
物件価格を説明する際、単に「高く売れる」といった将来予測だけでなく、実際の市場価格や根拠となるデータに基づく説明が求められます。根拠不十分な説明は買主の誤認を招き、後の損害賠償リスクにつながります。
■ 無免許者による勧誘行為は特に注意
本件ではY1が無免許であり、対価の受領についても疑義がありました。無免許者による勧誘は宅地建物取引業法違反の可能性があり、買主保護の観点からも問題です。
■ 重説・媒介行為の実体を明確に
重要事項説明書への宅建士名義の記載があっても、実際の説明・関与がなければ責任回避になりません。説明責任の履行状況を記録・確認することが重要です。
まとめ
不動産の投資用物件売買において、買主に対して根拠のない価格説明を行い、価値を誤認させて契約を締結させる行為は不法行為と評価され、損害賠償責任が認められる可能性があります。価格説明の具体性・説明責任の履行・適切な資格者による対応は、トラブル防止に不可欠です。
本件は、不動産取引における価値説明と損害賠償責任の関係を考えるうえで重要な裁判例と言えるでしょう。
【監修】

- 代表弁護士
-
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