「無期転換ルール」により有期雇用社員は無期雇用になります。このルールにより有期雇用から無期雇用に転換する場面では「雇止め」をめぐり大きなトラブルに発展しがちです。このコラムでは「無期転換ルール」の基本的な部分を解説します。
1. 無期転換ルールとは
同一事業主との間で有期労働契約を更新し、通算契約期間が5年を超えた労働者が申込みをすると、期間の定めのない雇用契約(無期契約)へ転換することを企業は拒めないこと(労働契約法18条)。
2. 無期転換ルールの適用条件
- 有期労働契約が1回以上更新されている
- 通算契約期間が5年を超えている
- 期間満了日の前日までに労働者が申込みをしている
- ポイント:通算期間は「契約更新日」で判定され、実労働日数ではないため、更新契約満了前に申込権が発生する場合もある。
3. 会社に求められる対応
- 契約書・就業規則の整備:申込権発生のタイミングや条件を明確化し、就業規則に反映。
- 明示義務(通知義務):5年経過時点および契約更新時に「無期転換権が発生する旨」を書面等で通知する必要がある。
- 自社方針の策定:どの方式で無期転換に対応するか社内ルールを確定し、周知徹底。
3. 労働者側のメリット・デメリット
メリット
- 雇止めリスクの解消:更新拒絶による雇止めではなく、解雇手続き(不当解雇リスク)に移行するため、安定的な雇用が得られる。
デメリット
- 労働条件の固定化:原則として転換前と同条件。必要に応じ「別段の定め」を置いて労働条件を変更できるが、転換前より不利益になることもある。
- 正社員との待遇差:賞与や昇給、転勤などは自動的には正社員並みとならない場合がある。
4. 転換後の定年・年齢上限
- 無期契約化により定年規定が適用されず、定年到達後も同条件で継続する可能性がある。
- 定年後再雇用(嘱託)社員も無期転換申込み対象となるため、65歳以上でも無期契約化が強制される場合がある。
5. 雇止め・契約満了時の注意
- 雇止めの判断を契約更新期ごとに行うと、無期転換権行使後は「解雇」となり、解雇手続きの正当性が問われる。
- 有期契約満了での雇止めを繰り返すと、無期転換権の発生がリセットされる仕組み(一定の空白期間要件)にも留意。
まとめ
無期転換ルールは有期雇用の安定を図る一方、企業側には契約管理の徹底と制度理解が求められます。
早めの社内準備(契約書・就業規則の整備、通知フローの構築など)でトラブルを未然に防ぎましょう。
【監修】

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