大阪高裁令和7年3月27日判決
土地が公道に接していない「袋地」の場合、周囲の土地を通行する権利(囲繞地通行権)が認められることがあります。では、公道につながる通路はあるものの、その幅が狭く土地を十分に利用できない場合はどうなるのでしょうか。この点が争われたのが、今回紹介する大阪高裁の裁判例です。
事案の概要
本件は、土地の分筆によって生じた宅地をめぐる通行権の争いです。もともと一つの土地だった土地が昭和30年代に分筆され、複数の宅地として販売されました。その後、隣接する土地の境界付近に通路が設けられ、周辺の土地所有者が公道へ出るために利用してきました。
しかし、その後事情が変わります。ある土地の所有者が別ルートで公道に出られるようになり、従来の通路を使わなくなったことをきっかけに、別の土地所有者が「自分の土地部分は通行させない」と主張するようになりました。
そこで、隣接地の所有者が民法213条に基づく通行権の確認を求めて訴訟を提起しました。
ポイント① 通路があっても「狭すぎる」場合は通行権が認められることがある
通常、民法は「公道に通じない土地(袋地)」について囲繞地通行権を認めています。しかし実務上は、次のようなケースも少なくありません。
- 公道には接しているが幅が極端に狭い
- 通路はあるが土地の利用に不十分
このような土地は、完全な袋地ではなく、「相対的袋地」と呼ばれることがあります。
裁判所は本件について、以下の事情を比較衡量した結果、通路の一部について通行権を認めるべきと判断しました。
- 土地が分筆された経緯
- 従来の通路利用の実態
- 通行の必要性
- 隣地所有者の負担
ポイント② 通路の幅を決める際に「接道義務」も考慮
本件では、通行権が認められるとしても、どの程度の幅まで認めるかが争点となりました。
原告は、土地に建物を建てるためには建築基準法上、幅員2m以上の接道が必要であることを理由に、約2.5mの通路幅を主張しました。
これに対し裁判所は、以下の事情を総合的に考慮しました。
- 過去の通路の利用状況
- 通路幅の歴史的経緯
- 近隣土地所有者の承諾書
- 建築基準法の接道要件
幅2mの範囲で通行権を認める
最高裁判例との関係
なお、最高裁は過去に「接道要件を満たさないという理由だけで、当然に通行権が広がるわけではない」と判断しています。
つまり、次のような考え方です。
- 接道要件だけで通行権が決まるわけではない
- しかし判断材料の一つとして考慮することは可能
本判決も、この最高裁の考え方を踏まえ、接道要件を一つの事情として考慮したといえます。
実務上のポイント
この裁判例から分かる重要なポイントは以下のとおりです。
袋地・相対的袋地をめぐる通行権の問題は、個別の事情によって結論が大きく異なります。土地の利用をめぐりトラブルが生じた場合は、早めに専門家にご相談ください。
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