東京地裁令和6年11月28日判決
土地を貸している地主にとって、賃料(地代)の滞納は大きな問題です。では、賃料が支払われない場合、すぐに賃貸借契約を解除できるのでしょうか。この点について判断したのが、今回紹介する東京地裁の裁判例です。
事案の概要
本件は、建物所有を目的とする土地賃貸借契約をめぐる紛争です。土地を貸していた地主(X)は、借主(Y)が地代を支払わないとして、以下の請求を行いました。
- 土地賃貸借契約を解除した
- 建物を取り壊して土地を明け渡すよう請求した
- 未払地代や、解除後の損害賠償(賃料の倍額相当)を請求した
これに対し、借主側は、契約解除自体が無効であると争いました。
ポイント① 賃料不払いによる解除には「催告」が必要
民法541条は、債務不履行を理由に契約を解除する場合、相当期間を定めて履行を催告することを原則としています。賃貸借契約でもこのルールは同じです。
つまり、賃料が滞納している場合でも、賃貸人は次の内容を備えた正式な催告をする必要があります。
- 未払賃料の額を明示する
- 支払期限(相当期間)を示す
- 支払いを求める
これは、賃料の支払いは比較的容易であり、「最後の機会」を与えることで支払いが期待できるためです。
本件で問題となった通知
地主は借主に通知書を送っていましたが、裁判所は次の点を指摘しました。
- 未払地代の支払いを求める明確な文言がない
- 支払期限(相当期間)が示されていない
民法541条が要求する「催告」とは認められない
ポイント② 催告なしでも解除できる場合はある
もっとも、賃貸借契約は信頼関係に基づく継続的契約です。そのため判例上、次のような場合には催告なしの解除(無催告解除)も認められます。
- 長期間の賃料滞納
- 悪質な契約違反
- 信頼関係を破壊する行為
本件では信頼関係破壊は否定
しかし、本件では裁判所は次の事情を重視しました。
- 滞納期間は約5か月
- 滞納額は約10万円程度
- 催告があれば支払われた可能性が高い
信頼関係が破壊されたとまではいえない
裁判所の結論
裁判所は、地主による正式な催告はなく、無催告解除を認める特段の事情もないとして、賃貸借契約の解除を無効と判断しました。その結果、地主の建物収去・土地明渡しの請求はいずれも認められませんでした。
実務上のポイント
この裁判例から分かる重要なポイントは以下のとおりです。
- 賃料不払いによる解除には原則として催告が必要
- 催告は「支払期限」を明示する必要がある
- 少額・短期間の滞納だけでは無催告解除は難しい
特に、土地賃貸借のような長期契約では、「信頼関係が破壊されたかどうか」が重要な判断基準になります。
よくある質問
賃料を何ヶ月滞納したら契約を解除できますか?
一般的には3ヶ月以上の継続滞納があれば、「信頼関係の破壊」として賃貸借契約の解除が認められやすくなります。1〜2ヶ月の滞納でも催告なしに解除すると無効になるリスクがあるため、まず内容証明郵便で支払催告を行うことが重要です。
催告書はどのように書けばよいですか?
催告書には①差出人・受取人の氏名住所、②滞納賃料の金額と滞納期間、③支払期限(通常7〜14日)、④「期限内に支払いがない場合は契約を解除する」旨の記載——を盛り込み、内容証明郵便で送付して証拠として残すことが大切です。
訴訟に発展した場合、どのような判決が出ますか?
3ヶ月以上の滞納では多くの判例で明渡しが認容されています。判決では①未払賃料・②遅延損害金(年14.6%)・③明渡しが命じられるのが典型です。なお、訴訟提起後に全額支払っても解除の効果は覆らないとした判例が多く、早期解決が重要です。
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