2024年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)をめぐり、2025年以降、公正取引委員会による勧告・行政指導が相次いでいます。大手出版社への初勧告に始まり、放送・広告業界では100社を超える一斉指導も行われました。本記事では、フリーランス法違反となる行為、実際の勧告事例、そして発注側企業が今取るべき対応を弁護士が解説します。

フリーランス法とは——下請法との決定的な違い

フリーランス法は、従業員を使用しない個人事業主等(特定受託事業者)に業務委託を行う発注事業者に対し、取引の適正化と就業環境の整備を義務付ける法律です。ライター、デザイナー、エンジニア、カメラマン、講師、配達員など、幅広い職種のフリーランスとの取引が対象になります。

企業として見落としてはならないのが、下請法との決定的な違いです。下請法は資本金1,000万円超の事業者にしか適用されませんが、フリーランス法に資本金要件はありません。従業員を雇っている事業者がフリーランスに業務委託すれば、会社の規模を問わず適用されます。「うちは中小企業だから下請法は関係ない」という感覚のままフリーランスに発注している企業は、知らないうちに違反状態に陥っている可能性があります。

フリーランス法違反となる主な行為

発注事業者に課される主な義務・禁止行為は次のとおりです。

  • 取引条件の明示義務:業務内容・報酬額・支払期日などを、書面またはメール等で直ちに明示する(口頭発注はそれ自体が違反)
  • 期日における報酬支払義務:給付を受領した日から60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を設定し、期日までに支払う
  • 禁止行為(1か月以上の業務委託):受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直し
  • 募集情報の的確表示義務:虚偽・誤解を招く募集表示の禁止
  • 育児介護等への配慮義務(6か月以上の継続的業務委託)
  • ハラスメント対策に係る体制整備義務
  • 中途解除等の事前予告義務(6か月以上の継続的業務委託は原則30日前予告)

勧告・行政指導の実例——2025年から一気に執行フェーズへ

施行から半年余りが経過した2025年6月、公正取引委員会は光文社・小学館に対して初の勧告を行いました。フリーランスのライターやカメラマンへの発注時に取引条件を直ちに明示せず、報酬の支払期日も明確に定めないまま支払いが遅延していたという、明示義務違反・支払義務違反が理由です。その後も島村楽器など勧告は続き、2026年に入ってからも共同通信社、中部電力、テレビ北海道、京都放送と、業種を問わず勧告が積み重なっています。

個別勧告と並行して、業界単位の集中調査も行われています。2025年3月にはゲーム・アニメ制作・リラクゼーション業等の45事業者、同年12月には放送・広告業等の128事業者に対し、契約書や発注書の記載、支払期日の定め方等の是正を求める行政指導が一斉に行われました。「発覚しなければ大丈夫」という段階はすでに終わり、当局が能動的に調査する執行フェーズに入っていることが分かります。

違反の大半は「悪意なきミス」——問題は管理体制にある

これまでの勧告・指導事例を見ると、違反の大半は取引条件の明示漏れと支払期日の設定・遵守の不備です。つまり、フリーランスを搾取しようという悪意から生じたものではなく、「昔からの口頭発注の慣行」「担当者任せの発注管理」「支払サイトの未点検」といった管理体制の問題から生じています。振込手数料を合意なく報酬から差し引いていた事例が「報酬の減額」として勧告対象になったように、担当者が違反と認識すらしていない行為が違反を構成するのがこの法律の怖さです。

違反があった場合、公正取引委員会等による調査・指導・勧告を経て、勧告に従わなければ命令・企業名公表、命令違反には50万円以下の罰金が定められています。しかし実務上のダメージは行政処分そのものより、勧告時点で企業名と違反内容が公表されることによるレピュテーション毀損と人材離れです。クリエイターやエンジニアの確保が経営課題となっている現在、「フリーランスに不誠実な会社」という公表は罰金よりはるかに高くつきます。

企業が今すぐ整備すべきチェックポイント

  • ①フリーランスへの発注フローを棚卸しし、口頭・チャットの曖昧な発注をなくす(発注書・条件明示のテンプレートを整備する)
  • ②報酬の支払サイトを点検する(検収基準ではなく「受領から60日以内」が上限)
  • ③振込手数料の負担、やり直し指示、経費の転嫁など「うっかり違反」になりやすい運用を洗い出す
  • ④継続的な委託先への中途解除の予告、ハラスメント相談窓口の整備状況を確認する
  • ⑤発注担当者への研修と、契約書ひな形の法務チェックを実施する

まとめ

フリーランス法は資本金要件がなく、フリーランスに発注するすべての企業が対象です。2025年以降の勧告・一斉指導が示すとおり、違反の中心は明示義務と支払期日という「管理体制の不備」であり、悪意がなくても勧告・公表に至ります。自社の発注実務が法律に適合しているか不安のある企業は、契約書・発注フローの整備からハラスメント体制まで、弁護士法人横浜キャピタル法律事務所までお問い合わせください。顧問契約による継続的なサポートも行っています。

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米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
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