中古住宅に住み始めて半年、天井に雨染みが広がってきた。土地を買って家を建てようと掘ったら、地中からコンクリート片や古い浄化槽が出てきた。こうした場合、買主は売主に契約不適合責任を追及できます。ただし、民法には「不適合を知った時から1年以内に売主に通知しないと請求できなくなる」というルールがあり、ここで権利を失う買主が少なくありません。本記事では、購入した不動産に欠陥が見つかったとき、買主が最初にすべきこと、請求できる内容、売買契約書の特約との関係を弁護士が解説します。

最優先は「知ってから1年以内」の通知

引き渡された不動産の種類や品質が契約の内容に合っていない場合、買主がその不適合を知った時から1年以内に売主に通知しないと、原則として追完・代金減額・損害賠償・解除のいずれも請求できなくなります(民法566条)。1年以内に必要なのは、訴訟を起こすことではなく「通知」です。どの部分に、どのような不具合があるのかを具体的に伝えれば足り、損害額の計算まで済ませている必要はありません。

  • 通知は、日付と内容が証明できる内容証明郵便で送るのが確実です
  • 仲介業者に口頭で伝えただけでは、売主への通知と認められないおそれがあります
  • 売主が不適合を知っていた場合や、重大な過失で知らなかった場合は、1年の制限はかかりません(同条ただし書)

通知とは別に、権利そのものの消滅時効もあります。権利を行使できることを知った時から5年、引渡しから10年のいずれか早い時点までに請求しなければなりません(民法166条1項)。

契約書の特約で期間が短くなっていないか

民法の「1年」は原則で、売買契約書の特約が優先します。個人間の中古住宅の売買では「引渡しから3か月以内に通知されたものに限る」「売主は契約不適合責任を負わない」と定められていることが多く、まず契約書と重要事項説明書を確認する必要があります。

ただし、特約があっても次の場合は請求できる可能性があります。

  • 売主が不具合を知りながら告げなかった場合(民法572条)
  • 売主が宅建業者の場合:通知期間を引渡しから2年以上とする特約以外は無効(宅地建物取引業法40条)
  • 売主が事業者で、買主が消費者の場合:責任を全部免除する条項は原則無効(消費者契約法8条)

売主側から見た免責特約の効力は「「契約不適合責任を負わない」特約は有効?」で詳しく解説しています。

通知書には、物件の表示、売買契約の日付、不具合の場所と内容(「2階北側の天井に雨染みがあり、降雨時に漏水する」など)、発見した日、契約不適合責任に基づいて修補または損害賠償を求める旨を書きます。写真を添付しておくと、後の交渉がスムーズです。

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よくある欠陥と請求の内容

買主が請求できるのは、修補などの追完(民法562条)、代金の減額(同563条)、損害賠償、契約の解除(同564条)です。欠陥の種類によって、現実的な請求の内容は変わります。

  • 雨漏り・シロアリ:修補または修補費用相当額の損害賠償。建物の構造に及ぶ被害なら代金減額も検討します
  • 地中埋設物(コンクリートガラ・浄化槽・古い基礎):撤去費用の請求。建築計画の変更や工期の遅れによる損害も問題になります
  • 土壌汚染:調査・浄化費用。汚染の程度によっては解除が認められる場合もあります
  • 面積の不足:面積を基準に代金を決めた売買であれば、不足分の代金減額。なお、数量の不足には上記の1年の通知期間の制限はかかりません(民法566条は種類・品質に限る)

「契約の内容に適合しているか」は、契約書の記載だけでなく、物件状況報告書(告知書)、重要事項説明書、売買価格、築年数、交渉の経緯を総合して判断されます。築40年の建物に新築同様の品質は期待できないため、経年劣化の範囲と判断されると請求は難しくなります。

欠陥に気づいたらすぐにやる4つのこと

  1. 記録を残す:日付入りの写真・動画を撮り、雨漏りなら降雨日と被害の広がりを記録する
  2. 勝手に直さない:先に修理すると、不具合の存在や原因を立証できなくなります。応急処置にとどめ、処置前の状態を記録してください
  3. 専門家に原因を調べてもらう:建築士や専門業者の調査報告書で、不具合が引渡し前からあったことと、修補費用の見積りを示します
  4. 売主に通知し、仲介業者にも連絡する:契約書の通知期間と民法の1年を確認し、内容証明郵便で通知します

売主が請求に応じない場合は、交渉、民事調停、訴訟の順に検討します。仲介業者が調査や説明を怠っていた場合は、仲介業者に対して説明義務違反の責任を問えることもあります。

よくある質問

Q. 知ってから1年を過ぎてしまったら、もう請求できませんか?

原則として請求できなくなります。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合は、1年の制限はかかりません。売主が過去に同じ箇所を修理していた記録などが見つかれば、請求の余地があります。

Q. 新築の建売住宅で雨漏りがあった場合は?

新築住宅の構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防ぐ部分については、売主が引渡しから10年間責任を負い、これを短くする特約は無効です(住宅の品質確保の促進等に関する法律95条)。

Q. 売主が個人で、修理費を払う資力がなさそうな場合は?

判決を取っても回収できないおそれがあるため、交渉の段階で分割払いや代金の一部返還など、現実的に支払える解決を探ることも選択肢です。仲介業者の説明義務違反を問えるかどうかも併せて検討します。

Q. 修理費の見積りが出る前に通知してもいいですか?

問題ありません。1年以内に求められるのは不具合の種類と範囲を売主が把握できる程度の通知で、金額の確定までは必要ありません。見積りを待って期限を過ぎるより、まず通知を済ませてください。

まとめ

購入した不動産に欠陥が見つかったら、まず契約書の特約で通知期間が短くなっていないかを確認し、民法の原則である「知ってから1年以内」の通知を内容証明郵便で済ませることが最優先です。特約で責任が免除されていても、売主が不具合を知っていた場合や売主が宅建業者・事業者の場合は請求できる可能性があります。修理を急ぐ前に写真と専門家の調査で証拠を残し、請求の内容(修補・減額・損害賠償・解除)を選んで交渉に臨んでください。

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