不動産売買契約において「融資特約」は、買主が金融機関から融資を受けられなかった場合に契約を解除できる重要な条項です。しかし、融資特約には期限が設けられていることが多く、その期限を過ぎた場合にどのような扱いになるのかは、実務上しばしば問題になります。
本件は、自動消滅型の融資特約が期限経過により効力を失い、買主の手付金返還請求が認められなかった裁判例です。
(大阪高裁令和5年1月19日判決)
事案の概要
売主X(宅建業者)と買主Y(個人)は、土地の売買契約を締結しました。主な契約条件は以下のとおりです。
- 売買代金:1億4,500万円
- 手付金:700万円
- 残代金支払期限:令和2年9月30日
- 違約金:1,450万円
契約には、次のような融資特約が付されていました。
「令和2年8月21日までに、買主が融資全額または一部の承認を得られなかった場合、本契約は自動的に解除され、売主は受領金を返還する」
買主Yは複数の金融機関に融資申込みを行いましたが、期限までに融資承認を得ることができませんでした。
その後、売主・買主間で売買代金の支払期限を10月16日まで延長する覚書が作成されましたが、融資特約の期限を延長することについての明示的な合意はありませんでした。
Yは、10月16日時点でも融資が得られなかったとして契約解除を主張し、融資特約に基づく手付金700万円の返還を請求しました。
裁判所の判断
裁判所は、買主Yの請求を認めませんでした。
判断のポイントは次のとおりです。
融資特約の期限は延長されていない
売買代金の支払期限を延長する覚書が存在することは認められるものの、
融資特約の期限について延長する合意があったとはいえないと判断されました。
そのため、融資特約は当初定められた期限(8月21日)の経過によって効力を失い、「自動解除」が生じたとはいえないとされました。
結果として、買主の融資特約による契約解除は認められず、手付金返還請求は棄却されました。
実務上の重要ポイント
本件は、不動産売買実務において非常に示唆に富む内容です。
① 融資特約と支払期限延長は別物
売買代金の支払期限を延長したからといって、融資特約の期限まで当然に延長されるわけではありません。
融資特約を維持したい場合は、その期限や条件を明示的に延長する合意が必要です。
② 覚書の文言が極めて重要
「支払期限を延長する」という記載だけでは足りず、
- 融資特約も延長するのか
- いつまで有効なのか
を明確に記載しなければ、後に効力が否定されるリスクがあります。
③ 媒介業者の説明だけでは足りない
媒介業者が「融資特約も延びている」と説明していたとしても、
売主・買主双方の合意として書面に反映されていなければ、法的には通用しない点にも注意が必要です。
まとめ
本件裁判例は、自動消滅型の融資特約は、期限を過ぎると効力を失うこと、そして支払期限の延長だけでは融資特約は延長されないことを明確に示しています。
不動産売買契約において融資特約を付す場合は、
- 期限管理を徹底すること
- 延長する場合は必ず明示的な合意を残すこと
が、後の紛争を防ぐために不可欠です。
【監修】

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