東京地裁令和7年9月11日判決・双龍産業事件
労働事件では、「解雇が無効かどうか」が主な争点になります。
しかし、解雇が無効であっても、必ずしも復職が認められるとは限らない場合があります。
この点について興味深い判断を示したのが、東京地裁の「双龍産業事件」です。
事案の概要
本件は、海外メーカーから特殊ゴム製品を仕入れて販売する会社で働いていた従業員が、普通解雇の無効を主張して争った事案です。
従業員は、
- 解雇は無効である
- 従業員としての地位確認
- 解雇後の未払い賃金
- 違法な退職勧奨や休業命令による損害賠償
などを求めて会社を提訴しました。
会社側は、従業員が取引先との間で複数のトラブルを起こしたことを理由に、勤務不良として解雇は正当であると主張しました。
裁判所の判断
解雇は「解雇権の濫用」で無効
裁判所は、会社が主張した各トラブルについて検討した結果、
- 事実関係が明確でないもの
- 単なるミスに過ぎないもの
- 数年前の出来事であるもの
などが多く、解雇事由としては不十分であると判断しました。
また、一部には不適切なメール対応など問題となる行為があったものの、
- 十分な事情聴取が行われていない
- 注意や指導による改善の機会が与えられていない
- 配置転換など解雇以外の手段が検討されていない
といった事情を指摘しました。
その結果、裁判所は
本件解雇は客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当ともいえないため、解雇権の濫用として無効
と判断しました。
しかし復職は認められず・・・
本判決の特徴は、解雇が無効とされたにもかかわらず、従業員としての地位確認が認められなかった点です。
従業員は当初、解雇を不当労働行為として労働委員会に救済申立てをしていましたが、その後これを取り下げました。
さらに、
- すでに別の職場で働き始めていた
- 職場復帰を求める連絡を会社にしていない
- 申立て取下げ後、1年半以上何の行動も取っていない
といった事情が認定されました。
裁判所はこれらを踏まえ、
従業員は会社で働く意思を既に失っていた
と判断しました。
その結果、
- 解雇自体は無効
- しかし復職は認めない
という結論になりました。
賃金請求の扱い
裁判所は、就労意思を失ったと判断されるまでの期間については、未払い賃金の支払いを認めました。
ただし、
- 他の職場で得た収入は「中間収入」として控除
- 解雇予告手当は賃金とは性質が異なるため充当できない
と判断しています。
休業命令は違法
さらに裁判所は、会社が行った
- 休業命令
- 団体交渉中の解雇通知
などの対応について、
従業員を退職に追い込む意図があった可能性がある
として、業務命令権の濫用による違法行為と認定しました。
この点について、会社に対して慰謝料30万円の支払いを命じています。
【監修】

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