2026年12月1日、改正公益通報者保護法が施行されます。今回の改正は、内部通報制度の実効性を抜本的に強化する内容で、違反した企業には刑事罰も新設されました。「うちは中小だから関係ない」は通用しません。本記事では、改正のポイントと企業が取るべき対応を解説します。

なぜ今、法改正なのか?

2020年の前回改正後も、有益な通報を受けたにもかかわらず調査を行わない企業や、通報者に不利益な取扱いをする事例が後を絶ちませんでした。内部通報は企業不祥事の早期発見に最も有効な手段であるにもかかわらず、制度が形骸化しているケースが多かったのです。

今回の改正は、こうした課題を踏まえ、通報制度を「形から機能」へ転換することを目的としています。

改正の4つの柱

1. 体制整備義務の強化と罰則の導入

従業員300人超の事業者に課される体制整備義務について、従事者指定義務違反に対する罰則が新設されました。行政措置権限も強化され、是正命令違反には刑事罰が科されます。

2. 保護対象の拡大

通報者の保護対象がフリーランスなど業務委託関係者にまで広がります。外注先からの通報も適切に受け付け、保護する体制が必要になります。

3. 通報妨害・通報者探索の明文禁止

「通報したら不利益を受けるぞ」という脅しや、通報者が誰かを探し出す行為が法律で明確に禁止されます。

4. 立証責任の転換

通報後1年以内の解雇・懲戒処分は、「通報を理由としたもの」と推定されるようになります。企業側が「通報とは無関係」であることを証明しなければなりません。

従業員300人以下の会社にも適用される2つのルール

「体制整備の義務は従業員300人超の会社だけだから、うちは関係ない」と考えるのは危険です。窓口の設置などの体制整備は300人以下なら努力義務にとどまりますが、今回の改正のうち次の2つは、会社の規模を問わずすべての事業者に適用されます。

ルール内容規模による違い
通報者への解雇・懲戒に刑事罰公益通報をしたことを理由に解雇や懲戒をした場合、行為者に6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人に3,000万円以下の罰金なし(全事業者)
1年以内の処分は「通報が理由」と推定通報から1年以内の解雇・懲戒は通報を理由としたものと推定され、会社の側が「別の理由による処分だ」と立証しなければならないなし(全事業者)
体制整備(窓口・従事者の指定など)窓口の設置、通報対応業務の従事者の指定、対応手順の整備300人超は義務、300人以下は努力義務

中小企業で特に問題になりやすいのは、通報とは無関係のつもりで行った処分です。たとえば、勤務態度を理由に以前から検討していた懲戒や解雇が、たまたま社員の通報の直後になった場合でも、推定が働きます。そうなると、処分の理由を記録で示せなければ争いに負けるおそれがあります。施行後は、通報があった社員への人事上の処分を決める前に、処分理由を裏付ける記録(注意指導の履歴・評価資料など)がそろっているかを確認する手順を入れておくことが重要です。

企業が今すぐ始めるべき5つの準備

① 内部通報窓口の見直し
外部窓口の設置や、匿名通報を受け付ける仕組みを整備しましょう。形だけの窓口では法改正の趣旨を満たせません。

② 通報対応マニュアルの改定
通報を受けてから調査・是正措置・フィードバックまでの手順を明文化し、対応フローを標準化します。

③ 従事者の指定と教育
通報対応に携わる従事者を正式に指定し、守秘義務や対応手順に関する研修を実施します。

④ フリーランス対応の体制構築
業務委託先からの通報にも対応できるよう、契約書の見直しや窓口の周知方法を検討しましょう。

⑤ 経営層への説明と予算確保
罰則が新設されたことの重大性を経営層に説明し、必要な予算と人員を確保します。

まとめ

改正公益通報者保護法は、すべての企業に対して内部通報制度の実質的な運用を求めています。刑事罰の新設は、立法の本気度を示すものです。施行まで残りわずかですが、段階的にでも対応を進めていくことが、企業のリスク管理として不可欠です。

NEXT STEP

依頼の前に、まず相談したい方へ

いきなりの顧問契約が不安な方には、気軽にご利用いただけるサービスをご用意しています。

MEMBERSHIP
¥1,000/月(税込)
プレミアムメンバーシップ
LINEからいつでも何度でも弁護士に相談可能。事前予約不要で気軽にご利用いただけます。
  • — 契約書・規程類のレビュー相談
  • — 顧問契約前に費用感・内容を確認したい
  • — LINEで24時間メッセージ送信可
  • — 月1,000円・いつでも解約OK
メンバーシップの詳細を見る →
RETAINER
顧問契約
企業の法務リスクを継続サポート
経営上のお悩みをいつでも相談できる体制を整え、トラブルを未然に防ぎます。
  • — 契約書作成・リーガルチェック
  • — 就業規則・社内規程の整備
  • — 労務・取引先トラブルの予防
  • — 月次相談・有事の優先対応
顧問契約の詳細を見る →

【監修】

米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
まずはお気軽にご相談ください。
詳細は弁護士紹介ページをご覧ください。
横浜

LINEでお問い合わせ

※スマートフォンでご覧の方はボタンをタップして友だち追加できます。

お電話でのご予約・お問い合わせ

※スマートフォンはボタンをタップするとそのまま発信できます。

営業時間:平日9:30~17:00