従業員が職場の規律に違反した場合、会社はどこまで解雇できるのでしょうか。この点について判断したのが、今回紹介する大阪地裁の裁判例です。
事案の概要
本件は、風俗店を経営する会社で働いていた従業員が、規律違反などを理由に解雇されたことの有効性が争われた事案です。
解雇された元従業員は、
- 解雇は無効である
- 自分は依然として従業員の地位にある
- 未払い賃金を支払うべきである
として、会社に対して訴訟を提起しました。
会社が主張した解雇理由
会社は、元従業員に次のような問題行為があったと主張しました。
- 欠勤する場合は前日までに連絡するよう指示していたにもかかわらず、7回当日欠勤の連絡をしたこと
- 閉店前に受付のドアを施錠したこと
- 勤務時間中に飲酒していたこと
これらは業務規律に違反する行為であり、解雇は正当であると主張しました。
裁判所の判断
解雇は「重すぎる」と判断
しかし裁判所は、これらの事情を総合的に検討した結果、解雇は無効と判断しました。
まず、欠勤については、
- 欠勤理由はいずれも体調不良
- 当日の連絡になったことに特段の落ち度は認められない
と評価しました。
また、受付ドアの施錠については、
- 規律違反ではあるものの
- 実際に業務へ具体的な支障が生じたとはいえない
と判断しました。
さらに勤務時間中の飲酒についても、
- 営業終了後の飲酒であった
- 飲酒した状態で接客したわけではない
ことから、顧客の信用を害するほどの問題行為とはいえないとされました。
その結果、裁判所は、
これらの事情は、労働契約の継続を期待できないほど重大なものとはいえない
として、
解雇は客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当ともいえないため、解雇権の濫用として無効
と結論付けました。
別の店で働いていた場合はどうなる?
本件では、元従業員が解雇後に別の店舗で働いていたことも争点となりました。
会社は、
「別の店で働いている以上、元の会社で働く意思はない」
と主張しました。
しかし裁判所は、
- 解雇された労働者は生活のために働く必要がある
- 他の職場で働いたことだけで就労意思がないとはいえない
と判断しました。
そのうえで、
労務提供ができなくなった原因は会社の解雇にある
として、会社には賃金の支払義務があると認めました。
実務上のポイント
この判決から分かるポイントは次のとおりです。
- 規律違反があっても、それだけで直ちに解雇が有効になるわけではない
- 行為の内容や会社への影響の程度が重要
- 解雇後に別の仕事をしていても、直ちに就労意思が否定されるわけではない
解雇は、労働者にとって生活を大きく左右する重大な処分です。そのため裁判所は、本当に解雇が必要なほど重大な問題行為なのかを慎重に判断する傾向があります。
本判決も、解雇の有効性を判断する際の基準を示す一例として参考になる事案といえるでしょう。
【監修】

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