「請求書を送っても払ってくれない」「貸したお金について、連絡しても返事がない」——電話やメールで催促しても動かない相手への次の一手として使われるのが、内容証明郵便です。この記事では、未払い金や貸したお金を請求する側の目線で、内容証明の書き方(文例)、送り方と費用、送った後に相手がどう出るかと、その次の手段までを解説します。

この記事のポイント

  • 内容証明は「いつ・どんな内容の文書を・誰から誰に出したか」を日本郵便が証明する制度で、相手に届いたことまでは証明されないため、請求では配達証明を付けるのが基本
  • 内容証明で支払いを求めると、その時から6か月は時効が完成しない(民法150条1項)。ただし、その6か月の間にもう一度送っても延びない(同条2項)
  • 窓口から1枚の文書を配達証明付きで出す費用は1,420円(2026年11月時点の日本郵便の料金)
  • 相手が正当な理由なく受け取りを拒んだときは、通常届くはずだった時に届いたものとみなされる(民法97条2項)
  • 期限までに払われなければ、少額訴訟・支払督促・通常の訴訟で回収に進む

内容証明郵便とは|証明されること・されないこと

内容証明は、いつ、どんな内容の文書を、誰から誰あてに出したかを日本郵便が証明する制度です。証明されるのは文書を出したという事実で、書いた内容が真実であることまで証明されるわけではありません。また、内容証明だけでは相手に届いたことまでは証明されないため、請求に使うときは配達証明を付けて、届いた日も記録に残すのが基本です。

内容証明でできること内容証明ではできないこと
請求したこと・その内容と日付を証拠に残す相手に支払いを強制する
催告として、時効の完成を6か月猶予する時効をリセット(更新)する
支払期限を区切り、遅延損害金の起算点をはっきりさせる相手の財産を差し押さえる
本気で回収する意思を相手に伝える無視されたときに、それだけで何かが起きる

内容証明そのものに、相手に支払いを強制する力はありません。それでも請求の場面でよく使われるのは、次の3つの役割があるからです。

① 時効の完成を6か月止める(催告)

内容証明で支払いを求めることは、民法の「催告」にあたり、催告の時から6か月間は時効が完成しません(民法150条1項)。時効が迫っているときに、訴訟の準備をする時間を確保できます。

ただし、時効の期間がリセットされる(更新される)わけではありません。6か月以内に訴訟などの手続をとらなければ、時効は完成してしまいます。また、この6か月の間にもう一度内容証明を送っても、さらに6か月延びることはありません(同条2項)。時効の期間そのものについては「借金の消滅時効」で解説しています。

相手と「支払いについて話し合う」ことを書面で合意した場合も、時効の完成は猶予されます(民法151条)。もっとも、催告によって猶予されている間にこの合意をしても、猶予がさらに延びることはありません(同条3項)。時効が近いときは、話し合いを続けるより訴訟の準備を優先すべきです。

② 請求した日と内容を証拠に残す

支払期限を決めていない代金などは、請求を受けた時から支払いが遅れた扱いになり(民法412条3項)、遅延損害金がかかり始めます。返済期限を決めずに貸したお金は、相当の期間を定めて返済を求め、その期間が過ぎた時から遅延損害金がかかります(民法591条1項)。いつ請求したかが後から争いにならないよう、内容証明と配達証明で記録を残しておくことに意味があります。

遅延損害金の利率と計算方法は「遅延損害金はいくら請求できる?」で解説しています。

③ 本気で請求していることを伝える

普通の手紙やメールと違い、内容証明は「このままなら法的手段に進む」という意思が相手に伝わりやすい方法です。それまで連絡を無視していた相手が、支払いや分割の相談に応じてくることもあります。差出人を弁護士にすると、この効果はより大きくなります。

未払い金を請求する内容証明の書き方

書く内容は、誰が誰に、何の代金をいくら、いつまでに払うよう求めるかと、払われない場合にどうするかです。感情的な表現や、事実と違う記載はかえって不利になるため避けます。

  • 表題:「請求書」「催告書」など
  • 債権の内容:契約日、取引の内容(商品名・工事名・貸した日など)、金額
  • 支払いの状況:もともとの支払期限と、まだ払われていないこと
  • 請求額と期限:「本書到達後○日以内に」と期限を区切る(10日〜2週間程度が多い)
  • 振込先の口座
  • 払われない場合の対応:期限までに支払いがないときは法的手続をとること
  • 日付、差出人と受取人の住所・氏名(会社なら会社名と代表者名)

家族や勤務先に知らせる、といった脅しめいた文言も避けてください。後で訴訟になったとき、こちらの書面も証拠として裁判所の目に触れます。事実を具体的に、淡々と書くことが、結果的にいちばん効果があります。

文例:売掛金(商品代金)を請求する場合

請求書

令和○年○月○日

(受取人)〒○○○-○○○○ 東京都○○区○○ ○-○-○
株式会社○○ 代表取締役 ○○○○ 殿

(差出人)〒○○○-○○○○ 横浜市○○区○○ ○-○-○
○○株式会社 代表取締役 ○○○○

当社は、貴社との令和○年○月○日付取引基本契約にもとづき、令和○年○月○日に商品(○○)を納品し、その代金○○万円を令和○年○月○日までにお支払いいただくよう請求いたしましたが、本日に至るまでお支払いがありません。

つきましては、本書到達後10日以内に、上記代金○○万円を下記口座にお振り込みいただくよう請求いたします。

上記期限までにお支払いがない場合は、法的手続をとることを申し添えます。

記

○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号○○○○○○○
口座名義 ○○カブシキガイシヤ

貸したお金の場合は、「令和○年○月○日に金○○万円をお貸ししましたが」と、貸した日と金額を書きます。返済期限を決めていなかったときは、「本書到達後○日以内に返済してください」と相当の期間を定めて請求します。借用書がある場合の進め方は「貸したお金を取り返す方法【借用書あり】」、取引先の売掛金については「売掛金・請負代金の未払いを回収する方法」もあわせてご覧ください。

字数・行数のルール

郵便局に出す謄本(控え)には、字数と行数の制限があります。横書きなら1行20字以内・1枚26行以内が基本です(1行13字以内・1枚40行以内、または1行26字以内・1枚20行以内でも可)。相手に送る文書には制限がありませんが、謄本と同じ内容である必要があるため、同じ書式で作るのが簡単です。英字は会社名などの固有名詞に限られます。また、請求書の写しや返信用封筒などを同封することはできません。

内容証明の送り方と費用

郵便局の窓口で出す

窓口に、次のものを持参します。内容証明を扱うのは一部の郵便局だけなので、出す前に確認してください。訂正に備えて印鑑を持っていくと安心です。

  • 相手に送る文書(内容文書)1通
  • その謄本2通(差出人の控えと郵便局の保管用)
  • 差出人と受取人の住所・氏名を書いた封筒
  • 郵便料金

出した日から5年以内なら、郵便局に保管された謄本を閲覧することもできます。

インターネットで出す(e内容証明)

日本郵便の「e内容証明(電子内容証明)」を使えば、インターネットで24時間受け付けてもらえます。窓口に行く時間がとれない場合や、文書を何度も直しながら作りたい場合に便利です。

費用の目安

窓口から定形郵便(50gまで)で、1枚の文書を配達証明付きで出す場合の料金は次のとおりです(2026年11月時点の日本郵便の料金)。

  • 基本料金:110円
  • 一般書留:480円
  • 内容証明:480円(2枚目からは1枚ごとに290円)
  • 配達証明:350円
  • 合計:1,420円(文書が2枚なら1,710円)

弁護士に依頼して弁護士名で送る場合は、このほかに弁護士費用がかかります。

送った後の流れ|相手の反応ごとの次の一手

受け取りを拒まれた・不在で戻ってきた

請求などの意思表示は、相手に届いた時に効力を生じます(民法97条1項)。相手が正当な理由なく受け取りを拒んだときは、通常届くはずだった時に届いたものとみなされます(同条2項)。

不在のまま保管期間が過ぎて戻ってきた場合について、最高裁平成10年6月11日判決は、相手が不在配達通知書などから内容を十分に推測でき、受け取ろうと思えば大きな手間なく受け取れた事情があるときは、遅くとも保管期間が満了した時点で届いたと認めました。ただし、この判断は個別の事情によります。戻ってきたときは、同じ文書を普通郵便や特定記録郵便で送り直すなど、相手が内容を知り得たことを示す手段を重ねておくと安全です。

支払いや分割の相談がきた

期限までに一括で払われれば解決です。分割払いの相談があったときは、金額・回数・支払日に加えて、支払いが遅れたら残りを一括で払う約束を書面にしておきます。この約束の決め方は「分割払いを滞納されたら全額請求できる?」で解説しています。

相手が債務を認めて一部でも支払えば、債務の承認として時効は更新され、そこから改めて時効期間が進みます(民法152条1項)。貸したお金の時効の数え方は「貸金返還請求の消滅時効」で解説しています。

無視された・反論してきた

期限を過ぎても支払いや返事がない場合は、裁判所の手続に進みます。請求額が60万円以下で証拠がそろっていれば少額訴訟、相手が争ってこないと見込まれるなら支払督促、言い分の対立があるなら通常の訴訟が候補です。判決などを得ても払われなければ、預金口座の差押えなどの強制執行で回収します。

相手が反論してきた場合は、その内容が今後の手続での争点になります。返事の書面は捨てずに保管し、どの手続を選ぶかを判断する材料にしてください。

弁護士名で内容証明を送るメリット

内容証明はご自身でも出せますが、弁護士名で送ると次の点が変わります。

  • 無視されにくい:弁護士が関与していることで、相手が法的手続を現実のものとして受け止めやすくなる
  • 書き方の誤りを防げる:請求額の計算、相手の特定(個人か会社か)、時効の期限などを確認したうえで送れる
  • そのまま次の手続に移れる:反論や分割の相談が来ても、交渉・訴訟・差押えまで同じ弁護士が対応できる

請求額が大きい、時効が迫っている、相手が会社で担当者と連絡がつかない、といった場合は、最初から弁護士名で送ることを検討してください。

よくある質問

Q. 内容証明は自分で出せますか?

出せます。内容証明を扱う郵便局の窓口に、相手に送る文書・その謄本2通・封筒を持参するか、日本郵便の「e内容証明」でインターネットから出します。弁護士名で出すと、相手が法的手続を現実のものとして受け止めやすくなります。

Q. 内容証明を無視されたらどうなりますか?

内容証明そのものに支払いを強制する力はないため、期限を過ぎても払われなければ裁判所の手続に進みます。60万円以下なら少額訴訟、相手が争わないと見込まれるなら支払督促、言い分の対立があれば通常の訴訟が候補です。

Q. 内容証明を送れば時効は止まりますか?

催告から6か月間、時効の完成が猶予されるだけで、時効期間がリセット(更新)されるわけではありません。6か月以内に訴訟などの手続をとる必要があります。

Q. 内容証明に請求書の写しや資料を同封できますか?

できません。内容証明で送れるのは文書1通だけで、請求書の写し・図面・返信用封筒などは同封できないため、必要な資料は別に送ります。

まとめ

内容証明は、それだけで支払いを強制できるものではありませんが、時効の完成を6か月止め、請求した日と内容を証拠に残し、相手に本気であることを伝える、という役割があります。大切なのは、送った後の次の一手まで決めてから送ることです。相手が払わなかったときにどの手続で回収するか、時効は大丈夫かを含めて、弁護士法人横浜キャピタル法律事務所にご相談ください。

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米玉利大樹代表弁護士
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