「早く来るのは自主的なものだから」は通りません

「始業前に来て仕事をしているのに、残業代が出ない」「自主的な早出だから賃金は払えないと言われた」——こうした状況に置かれている方は多いですが、これは違法である可能性が高いです。

結論から言うと、会社の指示や黙認のもとで早出をしている場合、その時間は労働時間として認められ、残業代を請求できます。「自主的な早出」という会社の言い分は、多くのケースで通りません。

この記事では、早出残業の定義、残業代が発生する条件、請求方法まで、横浜キャピタル法律事務所の弁護士が解説します。


1. 早出残業とは何か

早出残業とは、始業時刻より前に出社して業務を行うことです。通常の残業(終業後の残業)と区別して「早出残業」または「前残業」と呼ばれます。

早出残業が労働時間として認められるかどうかは、「会社の指揮命令下に置かれているかどうか」で判断されます。具体的には、上司に早出を指示された場合、早出しなければ業務が回らない状況になっている場合、上司が早出の事実を知りながら黙認している場合などが該当します。

逆に、純粋に本人の意思で早く来ているだけで、会社側が全く関与していない場合は、労働時間として認められない可能性があります。ただし、「自主的な早出」と主張するのは会社側であることが多く、実態としては半強制であるケースがほとんどです。


2. 残業代が発生する条件

早出残業で残業代が発生するのは、早出した時間を含めた1日の労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合です。

たとえば、所定労働時間が8時間の会社で1時間早出した場合、その日の労働時間は9時間になります。法定労働時間の8時間を1時間超えているため、1時間分の割増賃金(通常賃金の1.25倍以上)が発生します。

所定労働時間が7時間の会社の場合、1時間早出しても合計8時間で法定労働時間内に収まるため、割増賃金は発生しません。ただし、その1時間分の通常賃金は支払われる必要があります。


3. 「自主的な早出だから残業代は出ない」は本当か

会社が「自主的な早出だから賃金は払わない」と主張するケースは非常に多いです。しかし裁判所の判断では、以下の事情があれば「自主的な早出」とは認められないケースがほとんどです。

上司が早出していることを知っていた場合、早出しなければ業務量的に間に合わない状況だった場合、職場全体で早出が慣行になっていた場合、上司から「早めに来るように」という発言があった場合などです。

「強制はしていないが、来てくれると助かる」という上司の発言も、事実上の指示と見なされる可能性があります。


4. 早出残業代の計算方法

計算式は以下のとおりです。

時給 × 1.25 × 早出時間(法定労働時間超の部分)= 請求できる金額

具体例として、月給25万円(時給換算で約1,562円)で毎日1時間早出している場合、1日あたり1,562円×1.25=1,952円の残業代が発生します。月20日勤務なら月3万9,000円、年間では約47万円になります。

さらに、未払い賃金は過去2年分(労働基準法改正により2020年4月以降分は3年分)までさかのぼって請求できます。毎日1時間の早出が3年続いていた場合、請求総額は100万円を超えるケースもあります。


5. 証拠の集め方

早出残業を証明するためには、その時間に働いていたという証拠が必要です。

入退館記録やタイムカードは最も強力な証拠です。早出した時刻が記録されているため、コピーや写真を手元に保存しておきましょう。

早出中に送受信したメールやチャットのログも有効です。始業前の時間帯に業務メールを送っていた記録は、その時間に働いていた証拠になります。

PCのログイン・ログオフ記録も証拠になります。会社のPCを使用していた記録は、勤務実態を示す証拠として使えます。

同僚の証言も有効です。同じく早出していた同僚が証言できれば、職場全体の慣行として認められやすくなります。


6. 固定残業代(みなし残業)がある場合

「固定残業代として〇〇円を支給しているから、早出分も含まれている」と言われるケースがあります。

固定残業代の設定時間を超えた分については、別途残業代を請求できます。たとえば「月30時間分の固定残業代」が設定されている場合、早出を含む残業時間が月30時間を超えれば、超えた分の残業代を請求できます。

また、固定残業代の設定が法律上の要件を満たしていない場合(残業代として明確に区別されていない場合など)は、固定残業代自体が無効と判断されるケースもあります。


7. 会社への請求手順

まずは記録として、早出している事実とその時間をメモや日記に残し始めてください。今日からでも遅くありません。

次に、上司または人事・総務に対して「早出分の残業代を支払ってほしい」とLINEまたはメールで伝えます。口頭ではなく記録に残る形で伝えることが重要です。

会社が拒否した場合は、労働基準監督署への申告という方法があります。労基署は無料で相談でき、会社への調査・是正勧告を行う権限を持っています。

さらに解決しない場合や金額が大きい場合は、弁護士への依頼が有効です。弁護士が交渉・請求することで、未払い残業代が支払われるケースは多いです。


8. 弁護士に相談すべきケース

以下のケースは早めに弁護士に相談することをお勧めします。会社が「自主的な早出だから払わない」と主張して譲らない場合、請求したことで嫌がらせや報復があった場合、未払い金額が大きい場合、すでに退職しており会社との交渉が難しい場合です。

退職後でも2〜3年以内であれば請求できます。「辞めたから無理」ということはありません。


まとめ:「自主的な早出」という言葉に負けないでください

早出残業は、会社の指揮命令下で行われている限り、れっきとした労働時間です。「自主的なものだから」という会社の主張は、多くのケースで法的に通りません。

まず今日から早出の記録を残し始めてください。証拠が積み重なるほど、請求できる金額と成功率が上がります。横浜キャピタル法律事務所では、未払い残業代に関するご相談を承っています。

【監修】

米玉利大樹
米玉利大樹代表弁護士
年間数百件の法律相談を受け、年間100件以上の法律問題を解決しています。
「より良い解決」「迅速な解決」を大事にしており、個々の事案に適したスピーディな進行・解決を心がけています。
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