偽装請負は単なる契約形態の問題ではなく、企業に刑事罰や民事責任、さらには直接雇用義務を発生させる重大なリスクです。本コラムでは、実際に起きた違反事例・判例と、偽装請負が認定された場合に企業が受ける罰則について、弁護士がわかりやすく解説します。
偽装請負の違反事例
製造業での是正指導事例
ある大手製造業では、子会社・関連会社との間で請負契約を締結しながら、実際には本社の社員が直接ラインの労働者に作業指示・人員配置を行っていた事案がありました。労働局の調査により偽装請負と認定され、請負契約の解消と労働者派遣契約への切り替えが行われました。この事案では、企業名こそ公表されなかったものの、指導内容の是正報告と社内研修の実施が求められました。
多重下請け構造での違反事例
IT業界や建設業でよくみられるのが、元請・一次下請・二次下請といった多重下請け構造です。実際には末端の労働者が元請の指揮命令下で業務を行っていながら、契約上は下請け会社の従業員として扱われていた事案では、誰が使用者か不明な「使用者不明型」の偽装請負と判断され、元請企業に対する是正指導が行われました。
偽装請負に関する重要判例
松下プラズマディスプレイ事件(最判平成21年12月18日)
形式上は請負契約であったものの、発注者が労働者に直接作業指示を行い、労働時間管理も実質的に発注者が行っていた事案。最高裁は偽装請負を認定しましたが、請負元と労働者の間の労働契約は有効であるとして、発注者と労働者の間に直接の労働契約は成立しないと判断しました。違法派遣状態における発注者の直接雇用義務の有無が争点となった代表的判例です。
労働契約申込みみなし制度の適用事例
2015年の労働者派遣法改正で導入された「労働契約申込みみなし制度」(派遣法40条の6)により、違法派遣と知りながら労働者を受け入れた発注者は、労働者に対して直接雇用の労働契約を申し込んだものとみなされます。この制度により、偽装請負を知りながら受け入れていた発注者は、労働者から直接雇用を求められれば応じざるを得ない状況に追い込まれます。
偽装請負が発覚した場合の罰則
偽装請負は、主に以下3つの法律違反に該当し、企業・個人に対して重い罰則が科されます。
- 労働者派遣法違反:1年以下の懲役または100万円以下の罰金(派遣法59条)
- 職業安定法違反(労働者供給事業の禁止):1年以下の懲役または100万円以下の罰金(職安法64条)
- 労働基準法違反(中間搾取の排除):1年以下の懲役または50万円以下の罰金(労基法118条)
行政指導と企業名公表のリスク
刑事罰が適用されるのは悪質なケースに限られますが、それ以前に労働局による行政指導が入ります。指導に従わない場合、厚生労働大臣による是正勧告・改善命令を経て、企業名公表や許可取消といったレピュテーションリスクも発生します。
労働者からの直接雇用申込みと損害賠償
前述のみなし雇用制度により、労働者から直接雇用を求められる可能性に加え、過去の就労に関して未払賃金や慰謝料の請求を受ける可能性もあります。企業としては罰則以上に、実質的な人件費負担・紛争対応コストが大きな問題となります。
まとめ
偽装請負は、刑事罰・行政指導・みなし雇用・損害賠償と、複数のリスクが重なる深刻な法令違反です。契約書が「請負」となっていても、業務実態次第で偽装請負と判断されます。
基本的な判断基準や企業が取るべき対策については「偽装請負とは? 判断基準と企業が取るべき対策」もあわせてご覧ください。自社が偽装請負に該当しないか不安な場合は、早めに弁護士へご相談ください。
【監修】

- 代表弁護士
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