会社から解雇されたら、まずやるべきことは、①解雇理由証明書を請求する(労働基準法22条)、②解雇通知や会社とのやり取りを保存する、③離職票を受け取るの3つです。そして、内容に納得できないまま退職届や退職合意書にサインしてはいけません。解雇は労働契約法16条により厳しく制限されており、客観的に合理的な理由を欠く解雇は無効となる可能性があります。

このコラムでは、解雇された直後にやるべきこと・やってはいけないこと、解雇が無効になりやすいケース、争う場合の手続きと期間の目安、失業保険との関係について弊所が解説します。

解雇されたらまずやること3つ

①解雇理由証明書を請求する(労働基準法22条)

労働者が請求した場合、会社は解雇の理由を記載した証明書を遅滞なく交付する義務を負います(労働基準法22条)。口頭で解雇を告げられた場合でも請求できます。

解雇理由証明書により、会社がどのような理由で解雇したのかが書面で確定します。後の交渉や裁判で会社が理由を後付けすることを防ぐ意味でも、できるだけ早く請求してください。請求自体は口頭でも可能ですが、メールや書面など記録の残る方法をおすすめします。

あわせて、解雇予告の有無も確認しておきましょう。解雇には、少なくとも30日前の予告か、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払いが必要とされています(労働基準法20条)。突然の解雇で予告も手当もない場合には、その事実もメモに残してください。なお、予告や手当があったとしても、それだけで解雇が有効になるわけではありません。

②解雇通知・やり取りの証拠を保存する

解雇通知書や解雇予告の通知、上司とのメール・チャット、面談の録音、雇用契約書、就業規則、給与明細、タイムカードなど、手元にある資料を整理して保管してください。解雇に至る経緯を示す資料は、解雇の有効性を争ううえで重要な証拠になります。就業規則など在職中でなければ確認しづらい資料は、可能なうちに内容を控えておくと安心です。給与明細やタイムカードは、未払い残業代を併せて請求する場合にも役立ちます。

③離職票を受け取る

失業保険(雇用保険の基本手当)の手続きには離職票が必要です。受け取ったら、離職理由の欄が「自己都合」となっていないかを必ず確認してください。解雇であれば会社都合の離職であり、給付の内容にも関わります。記載が事実と異なる場合には、ハローワークで異議を述べることができます。

やってはいけないこと――退職届・退職合意書への安易なサイン

解雇を告げられた際、会社から「手続きに必要だから」などと退職届や退職合意書への署名を求められることがあります。その場でサインすることは絶対に避けてください。自らの意思で退職に合意した形になると、解雇の無効を争うことが極めて難しくなります。

書類は持ち帰り、内容を確認したうえで、弁護士に相談してから対応を決めても遅くはありません。サインを拒否したことを理由に不利益な扱いをすること自体、許されるものではありません。

解雇と退職勧奨の違い

「解雇」と「退職勧奨」は法的にまったく異なります。自分が受けているのがどちらなのかを見極めることが、対応の第一歩です。

項目解雇退職勧奨
性質会社による一方的な労働契約の解約退職の合意を求める働きかけ
労働者の対応無効を主張して争うことができる応じる義務はなく、拒否できる
注意点解雇理由証明書の請求・証拠の保存が重要執拗な勧奨は違法な退職強要となる場合がある

「辞めてほしい」と言われただけであれば退職勧奨であり、応じる義務はありません。どちらか曖昧な場合は「これは解雇ですか」と確認し、解雇だと言われたら解雇理由証明書を請求してください。検討のうえで退職勧奨に応じる場合でも、退職金の上乗せや離職理由の扱い(会社都合とすること)など、条件を確認し納得してからにしましょう。

解雇が無効になりやすいケース

次のような場合、解雇が無効と判断される可能性が相対的に高いといえます。

  • 解雇理由が事実と異なる、または具体的な理由が示されない
  • 十分な注意指導や改善の機会がないまま、能力不足を理由に解雇された
  • 就業規則に定められた解雇事由に該当しない
  • 業績悪化を理由とするが、人員削減の必要性・解雇回避努力・人選の合理性・手続きの相当性(整理解雇の4要素)を欠く
  • 妊娠・出産や育児休業の取得、労働基準監督署への申告などを理由とする、法律上禁止された解雇

解雇の種類(能力不足などを理由とする普通解雇、制裁としての懲戒解雇、人員削減のための整理解雇)によって審査される観点は異なりますが、いずれの場合も、会社側が解雇の有効性を基礎づける事情を具体的に説明・立証できなければ、無効と判断される方向に傾きます。これらに当てはまる場合、解雇の無効を主張して復職を求めることも、金銭的な解決を図ることも考えられます。

解雇を争う場合の選択肢と期間の目安

解雇を争う手段には、主に次のものがあります。

手続き概要期間の目安
交渉弁護士が代理人として会社に解雇の無効を通知し、復職または金銭解決を協議事案によるが、数週間〜数か月程度
あっせん(労働局など)第三者が話し合いを仲介する簡易な手続き短期間で終わるが、会社が応じなければ打ち切り
労働審判裁判所で原則3回以内の期日で審理され、調停または審判で解決数か月程度で終わることが多い
訴訟判決により解雇の有効性を最終的に判断1年以上かかることもある

どの手続きを選ぶべきかは、復職と金銭解決のどちらを希望するのか、証拠の状況、会社の対応などによって異なります。いきなり訴訟を起こすのではなく、交渉や労働審判から始めるのが一般的です。

金銭解決となる場合には、解雇が無効であることを前提に、解雇期間中の賃金(バックペイ)相当額や解決金の支払いを受ける形が一般的です。金額は解雇の理由や証拠の状況、選んだ手続きによって大きく異なるため、一概にいくらとはいえません。見通しは個別の事情を踏まえて判断する必要があります。

失業保険との関係――「仮給付」を知っておく

解雇を争うとなると生活費が心配になりますが、解雇の効力を争っている間も、雇用保険の基本手当を「仮給付」として受給できる制度があります。ハローワークで、解雇について係争中であることを伝えて手続きを行います。

後に解雇が無効とされ、解雇期間中の賃金(バックペイ)を受け取った場合には、仮給付として受け取った基本手当との間で調整(返還)が行われます。失業保険を受け取ったら解雇を争えなくなる、というわけではありませんので、生活を維持しながら争うことは可能です。なお、離職票の離職理由が「自己都合」のままになっていると手続きに支障が生じることがあるため、前述のとおり記載内容は早めに確認しておきましょう。

まとめ

解雇されたら、①解雇理由証明書の請求、②証拠の保存、③離職票の受領をまず行い、退職届や退職合意書への安易なサインは避けてください。解雇は労働契約法16条のもとで厳しく審査されるため、無効と判断される余地は十分にあります。争う手段には交渉・あっせん・労働審判・訴訟があり、仮給付により生活を維持しながら争うことも可能です。

時間の経過とともに証拠は散逸し、交渉のうえでも不利になりがちです。弊所では労働問題のご相談を取り扱っていますので、解雇にお悩みの方はお早めにご相談ください。

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米玉利大樹代表弁護士
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